20.練習は嘘をつきません
チームのメドレーリレーが、いよいよ始まります。
僕は大会は、いつも自分の決めたライバル的な存在が必ずいます。
僕の経験上、一番最初に出た大会では、ライバルはいなかったですが、2回目以降からは、ライバルと思われる人間がいました。
負けたくない人でありながら、自分の目標にもなります。
今回は、その経験をもとに、この話でチームメドレーリレーのレースを描いていきたいと思います。
僕の、ライバルは佐山さんです。
佐山さんは、チームリーダーではないですが、僕のチームである「Teamサウルス」のライバルチームとして負ける訳にはいけません。
次に、男性700メートル優勝者として潮川さんが、唯コーチのライバルに、なってきます。
まあ唯コーチは、潮川さんを意識しているかは解りません。
でも唯コーチは、選手時代に男性選手よりも速かったと言う伝説的な力を持った選手です。
選手を引退してから、長年選手から離れていたこともあり、自分よりも体の大きな選手に勝てるかというところがポイントになってきます。
その他にも個人競技で選んでいた種目以外でレースをする三角さん、石塚さん、潮川さんがいて他の種目での実力が気になります。
成人になってからの大会というのは、ライバルがいると大会も盛り上がってくるので、良い起爆剤になります。
メンタルが、弱い場合、すごくプレッシャーになりますが、メンタルが強い人に関しては、これが力となってきます。
学生時代と違い、成人の大会出場というのは、普通に考えれば練習量は学生に比べると少ない為、それほど周りからは意識されないと思われますが、実際は結果を重視されて、周り職場環境で話されることも多いです。
いずれにしても、自分が練習してきた力をフルに出せるか出せないかという話になり、仮に負けたとしても、今まで自分でやってきた練習の成果が存分に出すことができれば、僕の経験上は、あまり悔いはないです。
それに成人になってから同じ職場の人からも、自分の努力は評価されて仕事に活きてきます。
そういうところが、大人になってからのスポーツ大会に出る楽しみであり、次のレースの力となります。
━━━蟹マスターズ水泳大会━━━
チーム・メドレーリレー
Aブロック
1レーン チーム名 いかもと家
背泳ぎ 烏賊本 数也
平泳ぎ 烏賊本 和志
バタフライ 烏賊本 静子
自由形 烏賊本 成江
2レーン チーム名 チーム隼
背泳ぎ 森下 勝一
平泳ぎ 河原 学
バタフライ 潮川 厚
自由形 山田 陽一郎
3レーン チーム名 Teamサウルス
背泳ぎ 糸川 陽子
平泳ぎ 近江 海
バタフライ 中野 直也
自由形 速水 唯
4レーン チーム名 チームひかり
背泳ぎ 三角 静香
平泳ぎ 佐山 勝武
バタフライ 大岩 菱
自由形 早川 ひかり
5レーン チーム名 いるかスイマー
背泳ぎ 石塚 静
平泳ぎ 中田 智恵
バタフライ 松木 さつき
自由形 吉川 弥生
6レーン チーム名 鉄神51.5
背泳ぎ 平岡 研二
平泳ぎ 大澤 あかね
バタフライ 本田 悟
自由形 岬 智子
Bブロック
1レーン
チーム名 ファルコンスポーツ
2レーン
チーム名 スポーツミズキ
3レーン
チーム名 Team同調圧力
4レーン
チーム名 レーザーレーサー
5レーン
チーム名 チーム最強!庶民
6レーン
チーム名 Team外国人連合
中野「おおっ凄いメンバーだな」
僕「やっぱりチーム戦となると、みんな速そうなの連れてきてるな。」
糸川さん「見た目も、体つきのいい人ばかりですね・・」
僕「Bブロックも、あるけど勝たないとあまり関係ないから、まずはAブロックだな。」
唯コーチ「これは!燃えてきますね!!」と笑顔で言う。
中野「あっ!潮川さん!げげっ!バタフライじゃないか!!」
僕「えっ!ほんとだ!中野と同じじゃないか〜」
糸川さん「潮川さん、バタフライ速いのかな?」
僕「速いだろうね。少なくとも僕等よりは遥かに速いだろうね。」
唯コーチ「他にも速そうな人が、揃ってますね。」
僕「そうだねー佐山さんの、チームはTeamひかりか〜」「早川ひかりさんって人がリーダーなんだな。」
糸川さん「佐山さんが、リーダーじゃないんですね。」
僕「佐山さんは、入れてもらったほうだからね。」
糸川さん「なるほどね。」
唯コーチ「じゃあ、メドレーリレーが、本番みたいな感じですね!このチームは、速そうな人達がいますよ。」
僕「元水泳部がいるみたい。」
中野「まあっやってみっか〜」
唯コーチ「そうです!燃えてきますね〜」
実際に僕が以後、出逢った人達が沢山、出場していました。
アナウンス「Aブロックの競技を始めます。各チーム、所定のレーンへお集まり下さい。」
僕「じゃあ、みんな行こうか!」
一同「おう!」
Aブロック、全員がプールサイドに行き、各レーンへ整列します。
3レーンのTeamサウルス。
隣の4レーンは、佐山さんのチームひかり。
隣の2レーンは、潮川さんのチーム隼。
いずれも、水泳経験者のチームです。
最初は背泳ぎの糸川さん。
僕は、糸川さんに声を掛けた。
僕「唯コーチのアドバイス、足が下がらないようにを意識しながら、マイペースでいってね!」
中野「楽しくやろうよ。」ガッツポーズ。
唯コーチ「私も付いてるから大丈夫です。」
糸川さん「はーい!がんばるねー」と言ってプールに足から飛び込みました。
背泳ぎは、水の中からスタートします。
第1レーン 烏賊本 数也
第2レーン 森下 勝一
第3レーン 糸川 陽子
第4レーン 三角 静香
第5レーン 石塚 静
第6レーン 平岡 研二
位置に着きます。
全員が水の中から飛び込み台の棒を持ちます。
場内が静かになります。
ヨーイ!
ピッ!
ドドドドドッボ〜〜ン!
全員が飛ぶようにスタートを切ります。
糸川さんだけが、あまり飛ばずにスタートします。
しかし、水に入ると、ほどほどなバサロキックで、うねりながら、進みます。
5m地点で糸川さん浮上し、背泳ぎに入ります。
周りは、12.5m半分を越えています。
場内、応援で歓声が上がってます。「ワーワーワー」
僕「糸川さん、がんばれ〜」
中野「マイペースマイペース」
唯コーチ「いい感じ〜」
糸川さんは、体幹を意識し綺麗に水平をとってる背泳ぎをしています。
腕は、綺麗に伸びていて、キックとプルのテンポは、前回の個人種目よりも、よくなっていました。
唯コーチ「いい感じ〜いい感じ〜」
中野「これは自己ベストでバトンを渡せるぜ〜」
僕「さすが、糸川さん。本番強いね。」
トップは・・・
1位 5レーン 石塚選手。
2位 2レーン 森下選手。
3位 6レーン 平岡選手。
4位 4レーン 三角選手。
5位 1レーン 烏賊本勝也選手。
6位 3レーン 糸川選手。
トップ、5レーン石塚選手は、既に25mのターンを終えて37m地点を越えています。
その後ろに、2位の2レーン森下選手。
3位の平岡選手。
4位、三角選手がターンを終えて水中でバサロキック。
5位の烏賊本勝也選手も、ターンを終えて水中でバサロキック中。
6位の糸川選手は、背泳ぎからうつ向きになり、前転してクイックターン。
壁キックからバサロキックに入ります。
僕「綺麗にターン出来ているよ。」
中野「おっ!さっきよりいい感じ〜」
唯コーチ「速い速い〜」
糸川さん、5mで浮上して背泳ぎに入ると2レーン向こうの反対側から1位の石塚選手が泳いできます。
今、すれ違いました。
その後ろから2位、隣のレーン森下選手とすれ違い、すぐに3位の平岡選手とすれ違いました。全て折り返しての反対側。50m差。
糸川さんは、50m手前まで来てうつ伏せになり前転、クイックターン!
壁キックからバサロキック!
僕「バサロキックは、特にいいね!1レーンの烏賊本チームより速いな。」
中野「距離が縮まってきた。」
唯コーチ「スタートで遅れを取ったけど糸川さんの泳ぎが良くなって5位の烏賊本さんと距離が縮まってきてますね。」
糸川さんより前の5位、烏賊本勝也選手との距離5m。
その1m手前に4位、三角選手がいます。
糸川さん浮上して背泳ぎ!スピード上げます。
唯コーチ「スピードに乗ってる。いい感じ。」
中野「がんばれ〜糸川さん〜」
僕「さて僕は、そろそろ準備するよ。」と、僕はゴーグルを頭にして3レーンに足から飛び込みました。
糸川さん75m手前でうつ向きになり前転、クイックターン!
すぐ横のレーンで烏賊本選手が壁キック!糸川さん壁キック!バサロキック〜〜!
烏賊本選手、浮上して背泳ぎに、入ると同じ位置に糸川さん浮上!
中野「おっ並んだ!」
僕の周りにいた平泳ぎの選手は、背泳ぎの選手とバトンタッチをし、次々と飛び込んでスタートします。
「バッシャーン!バッシャーン!」
隣の佐山さんは、僕と同じく水の中からスタートを待ってます。
こちらを見てイライラしている様子です。
僕は、プールの中で拍手をしながら、糸川さんを待ちます。
唯コーチ「海さん、頑張ってね!足の蹴りですよ。」
僕は、親指を立ててグーと合図を送る。
唯コーチ「周りの平泳ぎは、飛び込みスタートだけど気にしないでくださいね!」 僕は頷く。
糸川さんは、烏賊本選手を追い越し、三角選手に迫っていた。
糸川さんは、三角選手の足の位置に来たまま100mの壁をタッチ!
僕は、すぐさま壁キックし、蹴伸びします。浮上して平泳ぎのスタートを切ります!
三角さんは、佐山さんとバトンタッチ!佐山さんスタート!壁キック!蹴伸びをしてから浮上して、平泳ぎに入ります。
中野「おっ!海さん佐山さんより前に出たぜ!」
唯コーチ「さすが!」
糸川さんは、立ち上がってゴーグルを取りました。「海さん、がんばって!」
僕は、佐山さんより前に出たのが、わかりました。
佐山さんは、視界に入ってきてませんが、多分すぐ後ろにいるはずです。
僕は、平泳ぎのキックを意識しながら得意のうねりを使って泳いでいきます。
1位の5レーン 中田智恵選手と反対側で既にすれ違います。
2位 2レーン 河原学選手と反対側で、すれ違います。
3位の6レーン 大澤あかね選手と反対側で今すれ違いました。
僕は、4位になってます。
前にいる3位とは25m差が付いています。
5位の佐山さんが追いかけてきてます。距離は、わかりません。
僕は、25m折り返し!壁タッチ。体を反転させて壁キック!
すぐ横で佐山さんが壁タッチ!体を反転!
すぐ後ろに、佐山さんが見えました。
さすが、スポーツ万能の佐山さんだと思い少し焦りが出ました。
水泳歴は僕の方が長いはずなのに・・・やはり素質か・・・
今、1レーンの烏賊本和志選手と擦れ違いました。
僕は、うねりを使った平泳ぎでスピードを、上げていきました。
佐山さんは、見えない。追い付かれてはいないみたい。追いつかれるかも・・・と、プレッシャーを感じながら泳ぎます。
そうこうしているうちに、50mの壁が近づいてきました。
中野が、手を握ってグーを作りながらイケーイケーとした様子で、応援をしてます。
糸川さん、唯コーチも声を出しながら応援してくれてます。
たぶん、すぐ後ろに佐山さんがいるんだろう。
僕は、50m壁タッチ!体を反転する時に顔が出ているので、中野と糸川さんを見ます。
最後に唯コーチを見ると「伸びてー」と聞こえました。
僕は壁キック!蹴伸びをした時、佐山さんが壁タッチをします。すぐ後ろにいました。
「伸びてー」・・・ん??僕は浮上して平泳ぎに入ります。
うねりを使ってスピードを上げます。
唯コーチの「伸びてー」とは?平泳ぎの伸びか。ん?もしかしてうねりを使った、平泳ぎは、よく褒められてたな。
スピードを上げるのに息継ぎ回数が多くなってる・・・佐山さんとは、あまり差がない・・たぶんすぐ後ろ。
僕は、息継ぎ回数を減らし、息継ぎした後、潜ってからの伸びを長くしてみた。
佐山さんが追ってきてる・・・僕のスピードは落ちた・・のか?・・
65m過ぎても、佐山さんは横に並ばない。
75m折り返しが近づいてくる。壁タッチ!体を反転させて壁キック!水中で蹴伸びー!
しばらくして佐山さんと擦れ違います。
「おっ!」佐山さんと差が少しひらいている。
僕は浮上して平泳ぎに入る。
息継ぎの度に、水中での伸びを長くする。
佐山さんは?佐山さんとの距離が、わからないうちに100mの壁が近づいてくる!
中野「よっしゃ!よっしゃ!」と100m地点でプールに入り、水に浸かってバトンタッチを待ってます。
僕は、息継ぎからの水中での伸びを長く取りながら100mの壁をタッチ!
すぐさま中野が、強烈壁キックし水中でドルフィンキックに入ります。ロケットスタートのバタフライです!!
すると佐山さんも壁タッチ!すぐさま次の泳者、大岩菱選手が壁キック!ドルフィンキックに入りバタフライスタートです!
僕はプールの中で、立ち上がり、ゴーグルを取って中野を見ます。
中野は一生懸命バタフライで泳いでます。
速い!
隣の大岩選手も、速い!
僕「中野ー!がんばれー!」と水の中で叫ぶ。
佐山さん「はぁはぁはぁ・・」と息が切れてます。「海くん、速いじゃないか。」と言うとプールサイドに上がりました。
僕もプールサイドに、上がりました。
糸川さん「海さん、おつかれさま〜」と笑顔です。
唯コーチ「海さん、よかったですよ。」と手のひらを広げて笑顔で話してきます。
糸川さんは、すぐに「中野さんー!がんばれー」と応援に入ります。
唯コーチ「中野さん、がんばれ〜!」と中野の応援に入ります。
僕は唯コーチに「伸びーって何?」
唯コーチ「ああっ」と笑いながら「海さん息継ぎ回数減らした方が速いと思ってね!」「平泳ぎの蹴りはよくなったみたいで、あとは蹴りと、うねりの勢いで進んだほうが速いと思いました。」
実際に佐山さんは、不慣れな上に力任せな平泳ぎで疲れて平泳ぎが減速してたみたいです。
僕の方は、少しスピードが上がり、疲れもあまりなかったようです。
僕「よし!」
糸川さん「隣の人速いよ!中野さん追いつかれそうです。」
唯コーチ「25m折り返しですね。」
中野は25m折り返し。壁タッチから反転。
隣の大岩選手も壁タッチ、反転します。
中野も大岩選手も水中ドルフィンキック!しばらく水中の攻防です。
浮上してくると、中野と大岩選手が並んでいました。
僕「これからが勝負だよ。」
糸川さん「中野さんーがんばれー」唯コーチ「中野さん!」
中野VS大岩選手に、「Teamサウルス」と佐山さんが入れてもらってる「チームひかり」に注目が集まります。
つづく・・・