34.その後、ある日の練習にて
※この物語に登場する組織は架空のものであり、実在する組織とは無関係のフィクション作品です。
※主人公の名前は「海」です。前回までは海が舞台なので、僕(うみ)という名前が、ややこしいので漢字で「うみ」と表記していましたが今回から通常の「海」という表記にします。よろしくお願いします。
※主な登場人物※
近江 海(おうみ うみ)→僕
中野 直也(なかの なおや)→今では忘れられた元空手道全国大会優勝者。ほぼ秒殺優勝というあり得ない強さをもつ。
糸川 陽子(いとかわ ようこ)→会社事務員
速水 唯(はやみ ゆい)→今では忘れられた元学生水泳全国大会優勝者。男性よりも速い伝説的な泳力を持つ。
━━━本編━━━
あのアクアスロン練習会から早くも3週間が経ちました。僕は思ったよりもあのアクアスロン練習会でダメージを残した為、チームでの練習は控えていました。そう!この僕がチーム練習を控えるくらいダメージが残っているということは、相当なダメージなのであった。しかしマイナス面だけではなく、練習会でやりすぎると後で体が動かなくなるということを学びました。
あのアクアスロン練習会後、他のチームサウルスメンバーは・・・
中野はさすが元空手日本チャンピオンだけあって身体のダメージは少なめ・・・大丈夫でした。
唯コーチは、さすが学生水泳日本一の伝説の選手だけあって全然大丈夫でした。
糸川さんはマイペースな動きでアクアスロンを完走した為、少しダメージはありましたが現在は大丈夫です。
つまり僕だけ大ダメージを受けていました(グググ・・・)
しかし今まで練習をしてきた僕が練習をサボるということは、どちらかというと耐えられないことで密かに練習を再開するのでした。
今年は異常気象とテレビで連日報道していて気温36℃。僕は何を血迷ったのか3週間ぶりにランニング練習に出るのでした。
僕「暑ちぃ〜な・・・まあ行くか〜」家の外に出るとすごい日差しと青空が広がっていました。この辺りは田舎町なので大都会と違いところどころに田んぼもあります。
僕「今日はこのシューズで行くか」僕は少し厚底になったシューズを履きました。このシューズは僕の決戦用ではなくあくまで練習用です。地面からの反発は感じません。
僕はGPSウォッチをスタートさせます。
僕「よし!GO!」走り出しました。今日はTシャツに青のショートスパッツを履いて練習用シューズを履いてのランです。ランニングポーチにスマホを入れています。
300mくらい走ると息が上がってきました。「はぁはぁ〜」「すぐに息が上がるな〜」しばらく走っていないからか、走るのがめんどくさくなっていましたが走り出すと「よし
!やるか!」という気分になります。これは行動を起こすと脳の側坐核が興奮しやる気が出ると本に書いてありました。
少し勢いよく走りすぎたと思いペースを落とします。
「さすがにこんな暑い時に走っている変なやつは僕くらいのものだな・・」と変わったところを街人に見せながら自分の凄さをアピールします!フフフ・・・この笑いは暑くても走れるんだぞ!という有意義な気分になる特別感を感じた良いえみです。
しかし、しばらく走ると方にこの暑い日に走る変わった奴が見えて来ました。上下に飛び跳ねるような少し変な走りで僕は、その変な男性を抜きました。
僕「はぁはぁ・・・フフフ・・・」と僕は変な笑みを浮かべます。
しかし後ろを見るとその男性は後ろについて来ています。んん!普通このペースだと僕が先に進んでいくはずですが差が変わりません。結構速いようです・・・
こうなると意地があります。
無理をしないようにスピードを上げます。タタタタタッ・・・・
後ろを見ると差は変わっていません・・・追いかけてるのか・・・誰でもこういった状況にで際したことがあると思いますがなかなかの恐怖です。
それでも、さすが僕は堂々と走ります。
登りに差し掛かりました。僕はスピードを変えずに登っていきます。後ろを左の道に入っていきました。ほっとするとなんと奴は脇道にある階段で僕が登っていた道に戻って来ました。「こ・こいつ・・・!」と僕は小さく呟きます。ペースを変えず走ります。
後ろを見ると僕と奴の間隔は変わっていません。平地になり次の登りの差し掛かります。すると奴は同じ道で後ろから間隔は変わらず追いかけてきます(もう追いかけられている感じ)
頂上に来て下りになります。すると奴はこともあろうに脇道の階段を使って下の道に降りていきます。「もしかして下に降りて下の道を走ってそのまま僕が走っている道に合流するつもりか・・・」と僕は呟きます。
案の定、階段を降り下の道から僕を追いかけてきます。「ぐぐ・・・」
するとなんと僕を追い越して同じ道に合流しました。
このまま僕は奴を追いかけるように奴との感覚を一定にして走って奴を追い掛けます。
そして僕が自宅に向かう為に左に曲がる交差点が近づいて来ました。
青信号から赤信号に変わります。そして奴は直進するのかストップします。
「よし!」信号機がある交差点に差し掛かると奴の前を通って左に曲がりました。
いちおう、勝った?!
奴はこれ以上追いかけてこなくなりました。「しかし、やばかった・・・」
ランニングをしていると稀ですけど、こういったことがあります。まあ、前方に走っている人がいてどうしても追いついてしまって抜くことはありますが追ってくる人はあまりないです。というより今回はレベルが高い人を抜いてしまったパターンですね。
しばらく走って中間の5km地点に到着しました。僕は5km地点で給水の為、一回休憩します。ちょうど自販機がここにはあるのでコーヒーを買います。甘いコーヒーを飲むことによって脳内にはドーパミンが分泌されるた為か次のランニングをする時に、またあそこで甘い物が飲めるということを考えると、よし!走りに行こう!という気分になります。ドーパミンが出ているのでしょうか・・
コーヒーを飲んでいると、一人のランナーが接近して来ました。男性は上下動が全くしない不思議な気持ちの悪い走りをしていました。
男性が僕の前を横切ります。5mほど進んで男性は立ち止まりました。
僕「あかん!変な奴が止まった!」と小声で呟きます。
男性「海さんじゃないですか?」
僕「ん?」誰だ??
男性「私です。」
僕「七三頭?おかっぱ・・・?」
男性「私です。植田です!」
僕「んんっ!」「おお!〜」
よく見ると蟹マスターズの時に水泳会場で一人だけ黒服を着て七三分けてカッチットした頭をしていた(株)ファルコンスポーツの技術者の植田亮一であった。
僕「おおっ!植田さん!久しぶり〜」
植田「」ありがとうございます。忘れてしまったのかと不安になりました。ファルコンスポーツの植田です。
僕「知ってます。」「しかし今日はまた・・・ランニングフォームが前と変わりましたね・・」
植田「そうなんですよ。この試作中のランニングシューズは上下動がほとんどなく走れシューズで前に前に押し出してくれます。」
僕「違法にはならないんですか???」
植田「違法になりません。最初このシューズを履いて走ってもいつも通りに走ってあまり速くはないのですがシューズの特徴を掴んで走るとこのようになります。このシューズは・・・・(どうたらこうたら〜理論を話していますが凡人には理解できない為、話をカットします)ということなのです。」
僕「要するに速く走れるということですね」
植田「はい!しかも疲れません。」
僕「すごい!」
植田「これは開発中です。」「以前言っていたトライスーツはバージョン3.3で完成しました。」
僕「例のトライスーツだね!しかしシューズやトライスーツや凄い製品が多いね!」
植田「うちの製品は世界では類を見ないものばかりです。それは・・・(理解できない難しい話を展開しているので省きます)ということなのです。」
僕「ほほ〜ぅ」僕はよくわからないが凄そうので返事した。
植田「まあ、一緒に走りながら話しましょうか?」
僕「植田さん大丈夫ですか?」
植田「海さんは普段から走ってますかね。私は久しぶりに走りました。でもまだ30kmしか走ってないのであと30km残っています。」
僕「えっ?60km走っているの?凄」
植田「まあこのシューズを使えば楽に走れます。どうしてかというと・・・(理解できない不思議な理論を展開中です。省きます)ということなのです。」
僕「はは・・・ま、まあ走りましょうかね・・・」
植田「はい、走りましょう!」
と僕たちは同じ方向に走り出しました。タタタタタタタタ・・・・・・
植田さんは僕より距離は走ってますがスピードは僕の方が速いです。まあ植田さんの方が僕よりすでに距離走ってますから当然ですが、少なくとも今、植田さんと走っていて僕の方が速いです。
走りながら・・・
僕「植田さんのシューズは少し厚底って感じでさほどうすぞこシューズと形は変わらないですね・・はあはあ・・」
植田さん「そうなんですよ・・でもこのシューズを履いていないと60kmは走れません・・はあはあ・・」
僕「そのくらい機能が高いんですか?はあはあ・・」
植田さん「さっきと同じですが、我が社の製品は世界で類を見ないものばかりです・・はあはあ・・・」
僕「確かにそうですね。普通に練習で60km走れないですからね・・・はあはあ・・」
植田「このシューズは特殊素材によって衝撃吸収能力が、ものすごく高いんです・・はあはあ・・」
僕「なんかファルコンスポーツは凄い会社ですね・・はあはあ・・」
そうこう話している時に後ろから僕たちを追い越していくランナーがいました。
僕「ん??」
植田「はあはあ・・・」
それはさっきの僕が負けたランナーでした。
僕「あのやろー・・」
植田「知り合いですか・・」
僕「いや・・・さっき走っていた時に僕を追い抜いて行った人ですよ・・完全に負けた・・」
植田「なるほど・・」
僕と植田さんはそのランナーを見ながら走っています。
植田「そう・・では実験で私のこのシューズを貸しましょう・・」
僕「えっ?」
植田「大丈夫です。ファルコンスーパー除菌コートを施していますから足の細菌は99.999999999%いません。」
僕「なんじゃそりゃ〜(汗)」
植田「とにかく簡単に他の人も捌けるということです。臭いもしません」
僕「そういう問題ではないが・・・」
植田「まあいつもトレーニングしている海さんならこのシューズを履けば前方の人に勝てますよ。」
僕「しかし、すぐに履き替えできませんよ」
植田「大丈夫大丈夫!このシューズは適当に履いてもシューズが締め付けてくれてほぼピッタリに合います。多分、私と海さんの足のサイズはあまり変わらないと思いますので・・・」
僕「うーん(今履いているシューズを履くのか〜)」
植田「私はそこの喫茶店で待ってますよ。ぜひやってみてください。」
僕は一回立ち止まって・・しぶしぶ植田さんが脱いだシューズを履きました・・・
植田「私は携帯靴をポケットに持ってますから・・」と言ってランニング用短パンのポケットから薄い折り畳んだ靴が出てきました。
植田「私が海さんのシューズを持っていますから行ってみてください」
僕は書き換えたファルコンスポーツのシューズが知らない間にビッタリはけているのに気がついた。軽くついている靴紐を結びました。
僕「じゃあ・・言ってくるね・・・」
植田「はい。まあ試しに試してきてください。」
と植田さんがいうと僕はさっきのランナーを追って走り出した。この履き替えにかかった時間はなんと5秒!上田さんとの会話が入っているから、まあ15秒ほど間が空きました。相手のランナーがもういなくなれば勝負・・・ではなく・・追いつくことはできません。僕は走り出しました・・・
僕「とりあえず、走っていた方向に行こう・・はあはあ」とランナーが行った方向に走っていきました。
僕はこのシューズに履き替え走っているうちにスピードが上がっていることに気づきました。しかし呼吸上がりは同じです。シューズは前に前に押し出してくれます。
しばらく走ると前方に例のランナーが見えました。信号待ちでした。ここの信号は長い・・・
信号が青になる瞬間にランナーに追いつきランナーが走り出す前に抜きました。タタタタタタ・・・
シューズを履いて1.5kmほど走りましたがスピードはやや落ちました。しかし呼吸はかなり楽に走れます。
僕「呼吸が楽だな・・はあはあ・・」
後ろからランナーが近づいてきました・・・タタタ・・・嫌な練習です・・・
僕の後ろからランナーが抜いていきました・・・やっぱり速い・・
しばらく僕はランナーの後ろについた形で走ります。相手も多分意識しているな・・・
僕は自分の走りのフォームに意識を持っていきます。タタタ・・・
スピードが上がってきた様子で足のピッチが上がりました。呼吸は楽に走れます。意識してピッチを上げ回転を上げます。
ランナーとの差が縮まりました。しばらくそのまま走ります。
2kmほど走って行くと徐々に差が縮まりだします。
2.5kmで僕はそのランナーを抜きました。
呼吸に余裕があるのでさらにスピードをあげ維持します・・・・
ランナーの足音が徐々に聞こえなくなりました。
そこから500m走って振り返るとかなり後ろにいます。さっきまでは抜き合いになってましたが今回は僕が抜いてから抜かれていないです。
しばらく走って僕はUターンをします。
折り返して走っていると例のランナーが正面から走ってきました。そのまますれ違います。若干、ランナーは疲れた感じに見えました。
そして植田さんの待つ喫茶店にきました。
喫茶店に入ると植田さんが座ってコーヒーを飲んでいました。しかしこのランニングウェアで喫茶店に入るのは浮きましたが「まあいいや」という感じです。
植田「どうでしたか?」
僕「抜きましたよ」「しかし相手が本気かどうかはわからなかったです。」
植田「でもパフォーマンス良いでしょう。」
僕「いいね〜最初は呼吸は変わりませんでしたが、しばらく走ってからは呼吸は楽でした。」
植田「意識するとスピードも上がるでしょう。」
僕「上がりますね〜」
植田「それが海さんの実力ですよ。実力を出してくれるシューズなので実力がない人が履いても然程、速くはなりません。」
僕と植田さんは喫茶店から出てしばらく一緒に走ります。
植田「相手が本気かどうかはわかりませんが海さんの実力がわかるシューズです。もちろんゆっくり走ると慣れてくると呼吸も楽に走れますし、スピードも維持できます。」
僕「いやーすごいシューズですね・・・」
別れる際、植田さんが言います。
植田「私も趣味はランニングですが会社の製品を試しながら走っているので合理的に走っています。」
僕「本当ですね〜」
植田「私も仲間が欲しいのですが私もチームに入れてもらえないでしょうか??」
僕「えっ・・」
植田「ええっまあ検討してもらえると嬉しいです。」
僕「でも、うちはトライアスロンチームですよ。」
植田「わかってますよ。うちの製品も新型のトライアスロン製品を開発しているので私も練習できれば合理的に仕事が進められるんです。」
僕「仕事でするんですか?」
植田「いえ、海さんたちを見て興味が出てきました。強い相手に立ち向かう姿がいいですね。」
僕「いや〜それほどでもないですけど・・・」
植田「それに製品制作に協力してくれるということで無料で製品を提供できると思うんです。」
僕「ええっびっくり!マジっすか?!」
植田「まあ、まだ試作品段階ですが製品版になると無料で提供できると思います。」
僕「僕達で良いんですか?」
植田「ええ、無名の選手の方が良いんですよ。勝てば私の開発した製品も証明できます。」
僕「みんなに聞いてみますね。まあ僕がリーダーなのでチーム入りは大丈夫だと思います。」
植田「ありがとうございます。連絡は以前お渡しした名刺のメールにでもしてください。」
植田「私が良いと思ったチームです。会社には上手く言っておきますね。損はしないと思いますよ。」
僕「なんだかプロでもないのにすごいことになってきたな〜」
こんなことを話しながら僕は植田さんと別れました・・・・
つづく・・・・・