45.「第21回 島の国トライアスロン大会(5)」 ~灼熱39℃の激坂バトル!―女王 vs 氷の女王―~
※この物語に登場する組織やルールは架空のものであり、実在する組織とは無関係のフィクション作品です。

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※この物語の舞台は、実世界におけるITUやJTUが存在しない、完全にオリジナルな異世界です。ここではトライアスロンは独自の歴史と発展を遂げ、従来の枠にとらわれない革新的な競技となりました。その結果、最高権威を持つ組織して誕生したのが「インフィニティ・トライアスロン・フェデレーション(ITF)」です。ITFは、自由な装備選択や革新的なルールを推進することで、選手たちが個性と戦略を存分に発揮できる環境を提供し、この世界におけるトライアスロン競技の基盤となっています。
ーーーーーーーーーーーーーー 登場人物紹介 ーーーーーーーーーーーーー
- 近江 海(おうみ うみ)
チーム「TRY REX」のリーダー。介護福祉士として働きながらトライアスロンに挑戦中。冷静だが情熱的な性格で、仲間と共に次回の出場を目指す。
- 中野 直也(なかの なおや)
元空手道全国大会優勝者。秒殺優勝の伝説を持つ。根性論者だが、最近は科学的指導にも耳を傾ける。応援に熱中し、来年の出場を熱望。豪快で少しお調子者な性格。
- 糸川 陽子(いとかわ ようこ)
会社事務員。地道な努力を積み重ね、“努力の天才”とも呼ばれる。スイムとランで成長著しい。来年の大会出場を目指す。ふんわりした雰囲気だが、芯が強い。
- 速水 唯(はやみ ゆい)
元学生水泳全国大会優勝者。伝説のスイマーで、現在はコーチ。チームの練習メニューを組み、科学的指導でサポート。生まれてから水泳で負けたことがない美人アスリート。
- 植田 亮一(うえだ りょういち)
スポーツメーカー「ファルコンスポーツ」の天才技術者。科学的な分析でチームを支える。堅苦しいが憎めない存在。
- 岬 智子(みさき ともこ)
チーム「鉄神51.5」のリーダー格。「島の国トライアスロン大会」常連優勝者で、他大会でも優勝歴が多い実力派。パープルのハイレグカット型競泳用水着トライスーツ。今大会は抜群のコース熟知力を発揮する。
- 八王子(はちおうじ)
ロングディスタンス・トライアスロンで大活躍。ワイルドな性格&高いプライドを持つ。黒い袖付き足首まであるトライスーツを愛用する。“DHポジション”を多用し、鉄人パワーでバイクを得意とする。
- 嘉栗(かくり)
“鉄の肺”を持つ男。潜水や心肺勝負で並外れた能力を発揮する変人。黒の袖付き・ハーフスパッツ一体型トライスーツを着て、行動も謎めいている。
- 藤原 涼子(ふじわら りょうこ)
チーム鉄神51.5所属でスイムが得意。ネイビーのスパッツ型競泳用水着(トライスーツ)を着用し、オープンウォータースイムでは岬と互角の実力。
- 清澄 快人(きよすみ かいと)
謎の高身長アスリート(190cm)。丈が短いタンクトップ+ビキニ型競泳用水着の2ピーストライウェア。バイクは平均的。全国高等学校陸上競技対校選手権大会(インターハイ)で10,000m。即ち10kmで日本一になった選手。自己ベストは29分45秒。
- 榊原 翼(さかきばら つばさ)
チーム「鉄神51.5」のバイクスペシャリスト。バイクのスペシャリストで青のハーフスパッツ型競泳用水着トライスーツを使っている。国内ロードレースで好成績を残し、プロ選手にも勝利した経験を持つ。
- 高橋 結城(たかはし ゆうき)
チーム「鉄神51.5」の理論派ランナー。足の動きを妨げないように黒色のハイレグカット型競泳用水着(トライスーツ)を使っている。ランを得意とする。
- 南城 颯太(なんじょう そうた)
伝説のスイマー。トライアスロン初挑戦でスイムは圧倒的だが、バイクとランで苦戦中。Tシャツ型トップとボックス型ツーピースウェアを着用。
- 蒼井 颯那(あおい そうな)
オリンピック出場経験のあるプロトライアスリート。藍色のハイレグカット型競泳用水着(トライスーツ)を着ている。“氷の女王”とも呼ばれるほどクールな性格で、圧倒的実力を誇る。
ーーーーーーーーーーーーーーー 本 編 ーーーーーーーーーーーーーーーー
午前11時45分。
島の国トライアスロンのメイン会場近くにあるビーチに設営された特設テントにある観客席は、すでに強烈な熱気に包まれている・・・
びっくりするが気温は、39℃で湿度も80%を超え、空気が呼吸するだけで肺に焼け付くような感覚をもたらす。
選手たちは、この容赦ない環境下で、最後の5km、最も過酷な山岳地帯へと突入していた。
これより最後の5kmは山に登ってくコースで激坂、アップダウンの激しい道、カーブがあり、足元の悪い道もあり、精神力さえも削り取るようなコースが、選手たちに最後の試練を与えている・・
僕たち「チームTRY REX」のメンバーは、このトライアスロンという長丁場でのドラマチックな展開に大型モニターを見ながら釘付けになっていた・・・
モニターに映し出されているのは、ランパートの後半である山岳コースにを走る選手たちの姿が映っていた。
実況アナウンサーの声が、その様子を生々しく伝えている。
アナウンス(スピーカー)
「ランパート後半戦、いよいよ山岳からスタートです! 先頭は依然として八王子選手!」
海「さすが八王子さんだな・・ショートでも存在感あるね。」
アナウンス(スピーカー)
「そして地元の女王・岬選手。このコースを知り尽くした彼女が粘りを見せています!」
唯コーチ「岬さんもさすがですね〜八王子さんの後ろにくっついていますね〜」
アナウンス(スピーカー)
「さらに・・そのすぐ後ろに、オリンピアン、蒼井颯那選手がぴったりとつけています! 」
糸川「蒼井颯那さんは、さすがプロです。安定したフォームですね」
アナウンス(スピーカー)
「さらにさらに・・・・・ 海岸線、坂道、泥道と、ランパート全体で驚異的な追い上げを見せている清澄快人選手が、トップグループを追いかけています。 三つ巴ならぬ四つ巴の展開になりそうです。」
中野「しっかし・・・まだとんでもねぇ〜奴が後ろにいるな・・・この大会、まだ後ろにとんでもない奴がいるんじゃね〜かっ」
植田「中野さん、さすがにラン後半5kmで後ろから伏兵が現れるのはないと思います!はい!」
アナウンス(スピーカー)
「トップ争いが、この山岳地帯で繰り広げられています!」
1位:八王子
2位:岬智子
3位:蒼井颯那
4位:清澄快人
5位:嘉栗
6位:藤原涼子
7位:高橋結城
中野「よく喋べりやがるぜ〜このアナウンサーは・・・」
画面には、それぞれの選手が山道を駆け上がる姿が映し出されていた。
岬さんは、歯を食いしばり、必死に前へ進む。かなりキツそうだ!自分の限界スピードを出し続けているかのようだ。
その表情には疲労の色が濃いが、諦めない強い意志が感じられる・・・
蒼井は、相変わらず安定したフォームだ。その表情はクールだが、瞳の奥にはものすごい集中力があるように見える・・・さすが世界を相手にしているプロ選手だ。
そして・・清澄。
丈の短いタンクトップとビキニ型のツーピースウェアは、彼の筋肉質な体をより一層際立たせている・・さすがアスリートという感じだ。
その長い脚を活かした歩幅は、急勾配でも衰えることなく、むしろ山道での強みを発揮しているように見えた。
海「山岳コースは、 やっぱりキツそうだな・・・ みんな苦しそうに顔を歪めてるね。」
僕の言葉に、中野が力強く頷づいた。
中野「当たり前だろ! この暑さで、しかもあのバイクの後の山登りだぜ! 足が鉛みてぇになってるはずだ! しかし・・蒼井さんは、やっぱ違うな・・」
中野が指差すモニターを見ると、蒼井颯那が映っている。蒼井は他の選手ほど顔を歪めていないように見えた。もちろん疲労は隠せないだろうが、その走りは乱れがない。
それに中野も元空手日本一の選手。見ているところが違うと思った・・・さすが中野だ。
中野「あれがオリンピックの気概ってやつか・・全然引いてねぇなっ!まるでこの山岳コースを知り尽くしているかのように走ってやっがるぜ!なかなかやるじゃね〜か」
糸川さんが心配そうに言う。
糸川「岬さんは、少しペースが落ちてきたみたい・・ 蒼井さんの圧力に押されてるかな・・」
唯コーチが静かに分析する。
唯コーチ「は〜い!この山岳コースは、まさに持久力と精神力が試される終盤の難所なんでしょうね。坂を効率よく登るテクニックと下りの技術も重要になってきます」
糸川「誰が前に出てくるんでしょうか・・・?」
唯コーチ「蒼井さん、もしかしたらこの山岳コースのために体力を温存してきたのかもしれませんね・・」と笑顔で言う。
植田さんがタブレットを見ながら言う。
植田「蒼井選手の心拍数は、他の選手に比べて安定しています。ペースに対する心拍数の上昇率も緩やかです。これは、彼女がまだ余力を残している・・・あるいは、この過酷な状況下でも効率的なエネルギー運用ができていることを示唆しています。このために、前のパートで我慢してきた可能性は高いです。はい!」
中野「長い説得力のある解説だな・・さすが植田さんだ!頼りにしてるぜ!!」
道は容赦なく急な上り坂が続く・・・
脚は痛みが走り、肺は限度を超えているかのよう。アスリートたちの顔は苦痛に歪み、ウェアは汗と泥で汚れている。
八王子は、依然として先頭を保っていたが・・・岬さん、蒼井が、そして清澄が、じわじわと差を縮めてきた。
強烈な登り勾配が・・・
なんと・・・
さらに強烈な登りになっていく・・・
心臓破りの坂というより死の坂というべき強烈な登り坂になっていった・・・
そして、舗装されていないコースに入った・・・
足元はゴツゴツとしアスファルトと比べて滑りやすくなっている。
選手のトライスーツが海から上がって砂浜を走り、山岳を走り、砂や泥がついて各自かなり汚れてきている・・・このランコースの過酷さが伝わってくる・・・
あまりの激坂と追撃してくる後方の選手に八王子がペースダウンしてきた・・・ショートコースを主戦場にしていない八王子はショートコースの過酷さを知ったようだった・・・
八王子の後ろから岬さんが抜いていく・・・岬さんが1位になる。
岬さんの嘘ろにピッタリとくっついている蒼井さんが八王子を抜いていく・・・
八王子は悔しそうな表情を見せている・・どうもスタミナ切れを起こしている様子だ・・・
アナウンス(スピーカー)
「岬選手がトップになりました〜!その後ろを蒼井選手がピッタリついています。急勾配の激坂コースなのに二人とも力強い走りです!すごい! しかし、その差はもうほとんどありません!」
唯コーチ「さすが岬さんですね〜」
糸川「地元女王ですね〜このまま逃げ切れればいいですね〜」
中野「しかし、蒼井さんはさすが余裕がありそうだぜ!走りがなんか違う・・・」
植田「中野さんのいう通りです。はい!蒼井さんはやはりこの山岳コースのために力を温存しているものと思われます。私のタブレットの計測器の数値から読み取れますです。」
海「大丈夫かな・・岬さん・・・」
アナウンス(スピーカー)
「トップ岬選手!後方に蒼井選手。岬選手はプロの蒼井選手相手に素晴らしいレースをしています。」
海「ほんとだね、プロ相手にすごいな〜」
中野「確かにな・・しかし蒼井のヤローはここから仕掛けてくるはずだぜ・・・」
アナウンス(スピーカー)
「おおっと!後方より激坂をすごいスピードで登ってくる選手がいます!!ペースダウンしている八王子選手を抜きました・・・」それは・・・
清澄快人・・・
許烈なそのランニング力で八王子を子供扱いするように抜いてきた・・そしてその前には蒼井颯那がいる・・・
アナウンス(スピーカー)
「現在の順位です。」
1位:岬智子
2位:蒼井颯那
3位:清澄快人
4位:八王子
5位:嘉栗
6位:高橋結城
7位:藤原涼子
8位:榊原 翼
アナウンス(スピーカー)
「6位と7位が入れ替わっています。こちらの情報によると高橋選手はランが得意のようです。二人とも岬選手所属チームの”チーム鉄神51.5”のメンバーです。」
糸川「榊原さんもじゃないかな・・・」
アナウンス(スピーカー)
「おお!!っと!なんと6位から8位までが岬さんチームの”チーム鉄神51.5”の人たちです!またすごい!」
海「は〜い、訂正入りました〜」
アナウンサーが興奮気味に叫ぶ・・・
アナウンス(スピーカー)
「ここで、遂に蒼井選手が岬選手に並びました!!! デッドヒート! !これはオリンピックレベルの走りです! 岬選手、地元の大歓声を受けてどこまで粘れるか!」
海「岬さん苦しそうな表情だな・・・」
唯コーチ「たぶん・・蒼井さんの方が上手・・・」
糸川「・・・」
大型モニターには岬智子を追い抜く、蒼井颯那が映った・・
アナウンス(スピーカー)
「ついにプロ蒼井颯那がトップに出てきた!!」
そして蒼井さんが岬さんを抜いた時に激坂が終わり、アスファルトの道に出た・・・二車線のアスファルトの道は車を通行止めにして自由に選手が走れる。
トップ蒼井と2位岬さんが、そのアスファルトの道に出た瞬間、蒼井はさらにスピードをあげ岬さんから差を開けていく・・・
岬さんも必死に追いかける。その後方にある激坂から顔を見せたのは・・・
来た〜〜〜 清澄快人・・ だ〜!
清澄快人は、丈が短いタンクトップにビキニ型競泳用水着を着ている。許烈なランニング力を足を動かすのにビキニタイプは足を動かすのに有利に使える。
そして、清澄快人は岬さんを強烈なランニング力で追いかけていく・・・
岬さんは蒼井を追って必死で食いついていく・・差は少し広がっている・・
ここからはアスファルトの強烈な下り道が始まった・・・疲労した足に効いてくる。
追っている清澄は、もうすでに岬さんの後ろに迫っていた。
坂道を利用して一気に・・・岬さんを・・・清澄は、抜いて行った・・・
アナウンサー(スピーカー)
「順位が変わりまくっています。まさに激戦です!2位と3位が変わりました!!あと5位と6位が変わりました!」
1位:蒼井颯那
2位:清澄快人
3位:岬智子
4位:八王子
5位:高橋結城
6位:嘉栗
7位:藤原涼子
8位:榊原 翼
蒼井が後ろを見て気にしている様子がモニターに映っている・・・
強烈なランニング力で追ってくる清澄快人に気づいているようだ。
蒼井颯那と清澄快人。二人はどちらが速いか!!
清澄快人が速い!!
清澄快人が蒼井颯那を抜きにかかる・・・
蒼井はプロの本能が働いたのだろう。並ばれた瞬間、蒼井は一段とスピードを上げた。
完璧にコントロールされたフォームで、地面を強く蹴る!
個人差があるが、蒼井颯那の着ているハイレグカット型競泳用水着のトライスーツが力強い脚の動きを妨げなく有利に働いてスピードを上げるのに役立っている。
その表情は、まるで何も感じていないかのように冷静で、「氷の女王」の異名にふさをわしい圧倒的なオーラを放っていた・・・
海「まさにプロの走りだね・・ 並ばれてから、さらに加速するなんて・・」
唯コーチが感心したように頷いた。
唯コーチ「蒼井さんは、やはりこのラストスパートのために、たぶんずっと力を温存していたんでしょうね。今が、蒼井さんにとって勝負の時だという判断なのでしょう。だけど・・・清澄さんはランニングのプロだから蒼井さんといえど厳しい勝負になりそうですね・・ここからが、プロの強さの見せ所ですね!」
植田さんがタブレットを見ながら興奮したように言う。
植田「蒼井選手の心拍数が190bpmを超えました! しかし、依然として驚くほど安定しています! 最大の効率で、最大のパワーを発揮しています! これぞトップアスリートです! はい!」
道は今度は舗装されていない、滑りやすいぬかるみに突入した。しかし、さっきの激坂を登った分、まだ下り坂は続いている・・・
前日の雨でぬかるみが残り、木の根や岩も露出している危険なコースだ。
上り坂で苦しんだ選手たちは、ここでさらに体力を消耗し、バランスを崩しやすくなる。
清澄は、長い脚を巧みに使い、下り坂を駆け下りていく。
蒼井も清澄も舗装していないぬかるみのある下り坂にズブズブ入っていった・・・
その後に少し遅れて岬さんも入っていく・・
アナウンス(スピーカー)
「現在、蒼井選手がトップを走っていますが、とんでもなくランの速い清澄選手がランパートより現れ、現在2位奪っています。トップ争うをしていなかった清澄選手がトップ争うに出てくるとはびっくりしましたが、清澄選手とんでもなく速いです!」
中野「まさにとんでもない奴だな・・」
海「それだけとんでもない選手だってことだね・・」
アナウンス(スピーカー)
「地元女王の岬選手、まさかの3番手に! そして清澄選手が2番手! 蒼井選手がトップ!いよいよプロの意地とプライド、そしてランが速い、清澄選手の追い上げによる苛烈な最終局面に入ってきました!」
レースは残りわずかとなった。ゴールの歓声が少しずつ聞こえ始めてくる。
蒼井は、掴んだトップを離すまいと、最後の力を振り絞って踏ん張っている様子が見える。
清澄は、自己の限界に挑むかのようなスピードで、蒼井を追いかける。
岬は地元の大歓声に背中を押され、必死に追いかける。
ぬかるんだ強烈な下り坂を全員ウェアを汚しながら走っている・・・映像がモニターに映し出されている。
強烈な走りで清澄は、蒼井を下り坂で抜いた・・・抜く瞬間に泥が蒼井に飛び散る・・・
その瞬間に・・・
清澄が・・ぬかるみに足を取られ・・・
滑って転倒した・・・・
中野「おおお!!」
海「ああ!」
唯コーチ「えっ!!」
糸川「ん?」
植田「やっちゃった・・・」
アナウンス(スピーカー)
「おおっと!!!転倒しました・・・最終局面!蒼井選手を抜いて1位に躍り出た清澄選手が足を取られ転倒しました・・・なんてことでしょう!」
転倒した清澄を、蒼井が抜いていく・・・そして岬さんも抜いていく・・・
清澄はすぐに立ち上がろうとするが、若干鈍くなった・・・ここはトライアスロンの怖いところ。
トライアスロンは自然相手なので何があるかはわからない・・・
立ち上がった清澄の後ろから走ってきたのは八王子ではなくチーム鉄神51.5の高橋結城だ!
高橋結城さんは八王子を抜いていた・・・
ランの得意な高橋さんは、この熟知している「島の国トライアスロン大会」の、この激下りを利用してきたのだ・・・
八王子は、嘉栗に抜かれていた・・・
アナウンス(スピーカー)
「現在の順位は・・・」モニターに順位表が映る。
1位:蒼井颯那
2位:岬智子
3位:高橋結城
4位:清澄快人
5位:嘉栗
6位:八王子
7位:藤原涼子
8位:榊原 翼
そして蒼井颯那が激下りを終え、全身泥だらけで舗装された平坦な道路に姿を現した・・
アナウンス(スピーカー)
「1位蒼井選手が最後の平坦コースに出てきました。」
すぐに、岬さんも激下りを終え、姿を見せた・・速い!
しばらくして・・高橋さんが姿を現した・・
アナウンス(スピーカー)
「どうも、この3名で優勝争いになるようです。しかし高橋選手は少しばかり2位岬選手と離れていてかなり厳しい感じです。」
糸川「どうなるんでしょう・・このレース!」
アナウンス(スピーカー)
「残り500メートル! 蒼井選手がゴールのあるスタジアムに入ってきた〜!」
岬さんもすぐに姿を見せた・・・トラックを2人が回ります・・・
岬さん、なかなか差が縮まらない。
アナウンス(スピーカー)
「地元の女王、岬智子選手このまま連続優勝を逃すのか〜〜!」
中野「嫌なやろ〜だな・・あとでシバいておくか」
僕たちチームのみんなはモニターに釘付けになっている・・・・・
アナウンス(スピーカー)
「続く最後の直線に入りました〜! ゴール目指して突進! 岬選手も決して諦めない! 全力で追いかけます! 高橋選手もグランドに入ってきて猛烈に走っています!!!」
選手たちが最後の力を振り絞っている。
ゴールゲートが目前に迫る。
蒼井が僅かに先行し、岬さんが最後の力を振り絞って食い下がる。
高橋さんもまた、驚異的なラストスパートで二人を追いかけている。
観客席からの「がんばれー!」という叫び声が、地鳴りのように響き渡る。
蒼井が、岬さんが、高橋さんが、それぞれの全てを出し尽くして、最後の数十メートルを駆け抜ける。
その表情は、達成感と、そして極限の疲労がない混ぜになっていた。
そして・・・・・
ハイレグカット型競泳用水着のトライスーツを着た蒼井選手が、真っ先にフィニッシュテープへと飛び込んだ!
選手のタイムが電光掲示板に表示される。
アナウンサー(スピーカー)
「蒼井颯那選手、優勝です! ”第21回 島の国トライアスロン大会”総合優勝は、オリンピアン蒼井颯那選手です! タイムは2時間00分00秒。 素晴らしい記録です!」
わずか5秒遅れで、地元の女王、岬智子選手が自己ベストで2位でフィニッシュ!
そして、そのすぐ後ろ、さらに30秒遅れで、高橋 結城選手が自己ベスト、3位でゴールを切った!
アナウンサーの興奮した叫びが会場に響き渡る。
アナウンサー(スピーカー)
「2位は岬智子選手! 地元の大声援に応え、最後まで粘り抜きました! そして3位は、高橋 結城選手! 得意のランで表彰台に食い込みました!素晴らしい!!」
蒼井は、フィニッシュラインを越えた瞬間、両腕を高く突き上げた。
クールな「氷の女王」が一瞬見せた感情の爆発に、会場の拍手は最高潮に達する。
息切れしながらも、敗北を受け入れた岬さんが、蒼井に歩み寄り、優しく握手を求めた。
高橋さんもまた、自分のランニング能力の全てを出し尽くしたことに誇りを感じているのか、晴れやかな笑顔を見せた。
そしてある程度の選手がゴールをした・・・
大型モニターには順位とタイムが掲載されている。
最終順位(暫定タイム):
- 1位:蒼井 颯那(2時間00分00秒)
- 2位:岬 智子(2時間00分05秒)
- 3位:高橋 結城(2時間00分35秒)
- 4位:嘉栗(2時間01分30秒)
- 5位:高橋 結城(2時間02分00秒)
- 6位:藤原 涼子(2時間03分45秒)
- 7位:清澄 快人2時間04分10秒)
- 8位:八王子(2時間04分10秒)
海「すごいレースだったな・・最後の最後まで、目が離せなかった・・」
僕たちのチームも、その戦いに圧倒されていた。トップ選手のレベルの高さ、そしてトライアスロンという競技の面白さを改めて感じた。
中野が僕の肩を叩く・・
中野「くっそー! 見てるだけってのは歯がゆいな! でも、あの走りを見たら、来年は絶対あそこに立たなきゃって思ったぜ!俺がまとめて全員相手してやらぁ〜 来年は俺たちがやるぞ!!!!!」
糸川さんも頑張る!と言った表情をしている。
糸川「私も来年は絶対に完走できるように、もっともっと練習頑張ります!」
唯コーチが優しく微笑む。
唯コーチ「はあ〜い!きっと完走できますよ〜。みんな今日のレースで感じた悔しさや感動を、必ず力に変えられるはずです〜。来年に向けて、また頑張りましょうね」
しばらくして、表彰式を終えた蒼井選手が、僕たちの観客席の方に近づいてきてくれた。藍色のハイレグカットのウェアは、まだ汗と泥に濡れている。
マイクを手に取り・・・
蒼井「皆さん、応援ありがとうございました! 声援、ちゃんと聞こえていましたよ!」
彼女が観客のみんなに微笑みかけている。
その「氷の女王」とは思えない親しみやすい笑顔に、僕たちは少し戸惑いつつも、大きな拍手を送った。
蒼井は少し照れたように笑った。
蒼井「皆さん、ありがとうございます。この島のコースは本当にタフでしたが、皆さんの応援のおかげで最後まで力を出し切れました。来年もこの大会に出場するかもしれないです。皆さんともまたレースで会えるのを楽しみにしています」
そう言って、彼女は観客のみんなに丁寧に頭を下げた。プロアスリートとしての実力だけでなく、人としての魅力も兼ね備えている人だと感じた・・
その夜、レースの興奮冷めやらぬまま、僕たち「チームTRY REX」は、島の小さな民宿で祝賀会を開いた。
レースに出られなかった悔しさ、トップ選手の凄さへの感銘、そして来年にかける新たな決意が、ビールと食事と共に語り合われた。
祝賀会も終盤に差し掛かり、少し酔いも回ってきた頃、僕は夜風に当たりにテラスに出た。
すると唯コーチも酔いを冷ましにかテラスに出てきた・・・
空には満点の星が輝いていた・・・。
海「あっ唯コーチも涼みに?」
唯コーチが頷いた・・・
唯コーチ「今日は、本当に感動的なレースでしたね〜」
唯コーチが、遠くの海を見つめながら静かに言った。
海「うん。トップ選手たちの、あの極限の中で戦う姿を見て、心が震えたよ。自分も、いつかあんな風に走ってみたいって思うレースだったよ」
僕は星空を見上げながら呟いた・・・
海「来年、絶対にこの島の大会に出場して、完走するよ。そして、あの舞台で、みんなに応援してもらえるような走りをするんだ。唯コーチにも・・かっこいいって言ってもらえるように、頑張るよ」
そう言うと、唯コーチは僕の方を振り返り・・優しい・・でも真っ直ぐな眼差しで僕を見つめた・・
唯コーチ「海さん・・信じていますよ〜。海さんなら、きっと輝けますよ」と笑顔で言った。
彼女の言葉は、僕の心にじんわりと染み込んだ。
静かな夜だった。
波の音だけが響く中、唯コーチが、そっと僕の手に自分の手を重ねた。
その手は少し冷たかったけれど、確かな温もりがあった。
言葉はなかったけれど、その手を通じて、僕たちの間の、言葉にならない感情が通じ合ったような気がした。
それは、トライアスロンへの情熱であり、仲間への信頼であり、そして・・・ほのかな、新しい関係の始まりを予感させるものだった。
星空の下で僕と唯コーチはお互いを意識し合うようになった・・・。
レースは終わったが、僕たちTRY REXにとって、それは終わりではなく、新たな挑戦の始まりに過ぎなかった。
星空の下で誓った目標に向かって、僕たちは明日からまた、トライアスロンに向かって走り始めて行くのだった・・・・。
つづく・・・

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