15.初めてのスポーツ大会出場。

蟹マスターズ水泳大会まで、あと1週間となりました。

スイミングクラブの中級者水泳教室の日には、いつもレッスンに参加しています。

特に、唯コーチの教室には、全員参加しています。

それ以外の日は全員、仕事が終わってから隣町にある公共の「隣国海洋プール」で練習をしています。

ここが一番スイミングクラブ以外のプールでは、近く18kmほど離れています。

のちに、トライアスロンのバイク練習コースの折り返し、近くに位置し、僕はプールに立ち寄って1500m泳いでバイクで帰る、日々を過ごすスイム練習用プールとなります。

このプールは、25mの淡水路プールでコースロープを張ってレーンがあるのですが、高齢者の水中ウォーキングをしている人が、多く1レーンを泳ぎだけに使うには22時の閉館、1時間前が一番空いています。

最初は、よくわからず泳ぐレーンがなくて、練習にはなりませんでした。

ひどい日には、ここのプールの待合室で、プールが空くまで、みんなで携帯用オセロをして、結局プールが空かず、そのまま帰る始末。

今は中のスタッフとも顔見知りになり空いてる時間が、わかったという訳です。

この「隣国海洋プール」は、月曜日休館日です。

僕達の指導は、もちろん唯コーチです。

唯コーチは、月曜日が固定休で、あとの1日は教室を担当していない日、1日のどこかが休みになる、週休2日です。

唯コーチ以外、全員20時30分頃までには、「隣国海洋プール」の玄関に集まることができます。

唯コーチの場合は、スイミングクラブの教室に入ってない日は、早く仕事を上がって、21時頃に来てくれます。

残業で来れない日は、メールで知らせてくれます。

当然、僕等はプールの中なので練習が終わってからメールを見ます。

唯コーチが、来そうにない日は、みんな何となくわかり3人練習をしていきます。

 みんな揃った日の「隣国海洋プール」玄関での話。

―大会1週間前―

僕「あと一週間で本番だから、今日は頑張っていこう」

中野「おう!頑張っていこうぜ!」

糸川さん「私ももう少しタイムが縮められるように頑張ってみます」

唯コーチ「糸川さん、あと少しで50mを50秒で泳ぐことができるから、頑張りましょう。」

糸川さん「うん!」「私100m背泳ぎだけど、ドベでもいいからがんばります!」

中野「俺もバタフライ100mは、ドベかもしれないな・・はっはっ!」

僕「出られることに意義があるんだから大丈夫大丈夫!」

中野「海さんは、前より速くなったね〜」

僕「そうそう平泳ぎ500mだけど、50m 45秒ほどでいけそうだから入賞するかな?」

唯コーチ「みんな大丈夫ですよ。本番って割と成績良くなりますよ。入賞して蟹をもらいましょう!」ガッツポーズ。

中野「唯コーチのクロール700m優勝で蟹ゲットだな。」ガッツポーズ!

僕「さあ、今日も練習がんばるかね〜」

みんなで軽い円陣を組んで少し小さい声で糸川さんが「ファイト〜」

みんなで「オォ〜」と、少し小さい声で気合いを入れます。と、いつも励まし合いながら練習をずっと続けていました。

気合い入れ円陣

僕が平泳ぎ500m。

中野がバタフライ100m。

糸川さん背泳ぎ100m。

唯コーチクロール700m。

メドレーは、中野がバタフライ100m。

糸川さんが背泳ぎ100m。

僕が平泳ぎ100m。

唯コーチ100m。

トータル400m。

 

 そして蟹マスターズの大会当日が来ました。

大会当日の朝。

 当日、僕達は中野の4WD車で現地入りします。

運転は当然、中野で助手席が僕。後部座席に糸川さんと唯コーチ。

車の中で、僕は「今回は各自出場種目が少ないけど、取り敢えず個人種目と、リレーに出てみて今後も大会を決めていこう。」

糸川さんと唯コーチは「わかりました〜」

中野「しかし、思った以上に練習したな。みんな・・」

僕「そうそう、僕も驚いているよ。」「今回大会やってみて、よかったら本格的にチーム名考えて色んな大会に出てみよう。」

糸川さん「いいね!」

唯コーチ「それいいね!」

僕「唯コーチ選手辞めたのに大丈夫?」

唯コーチ「結構楽しいから大丈夫ですよ〜」

糸川さん「やったー!」

中野「俺も結構たのしいよ。空手の時は、プレッシャーばかりで嫌にもなったけど、俺の水泳の実力なら負けても何とも思わないからな。」

糸川さん「でも、本気でおねがいね!」

中野「ああっ大丈夫!俺、本番強いから入賞して蟹持って帰るよ。」と、ガッツポーズ!

そうこうしている間に現地入りです。

 ここは100kmほど離れたスイミングクラブです。

周りを山に囲まれ一部が海にめんしている。リアス式海岸になった盆地の町です。

臨時に作られた、専用駐車場に沢山の車が駐車してます。

中野の運転する車は、臨時駐車場に停め、僕と中野と糸川さんと唯コーチは車を降り、屋内プールへと入りました。

着替えてプールに繋がる廊下で待ち合わせです。

 みんなレース用として水着を新調しました。

バタフライの中野は、明るいグレー色のスパッツ型競泳用水着。

中野は、体がチームの中では大きく少し体脂肪に覆われた筋肉質な体型で空手家だが、なかなか見栄えの良い姿です。貫禄十分。

次は、背泳ぎの糸川さん。

糸川さんは、今回は唯コーチの勧めで競泳用水着。

少し濃い目の黄色。レグ位置が少し高めで、いつもの背中U字型の水着だったが、本人は少し恥ずかしいらしいが糸川さんは、外見が悪くないからわりと似合っている。

次は平泳ぎの僕。

僕の水着は、ターコイズ色のビキニ型競泳用水着。以後、僕はこの色を使うようになります。

足が動かしやすいのがビキニ型の特徴で、このスポーツメーカーは、レグ位置が少し高めです。

僕は、体脂肪低めの筋肉質なので水には浮きにくい。

最後は、唯コーチ。

唯コーチは、ターコイズ色の競泳用水着でレグ位置高め。たまたま僕と色が同じになった。

本人は、かなり気合が入っている。唯コーチは、元学生日本優勝者。容姿見栄えもよく、チームの中では唯一無二の水泳実力派。

 

 そしてレース最初の登場は、バタフライの中野。

僕「さて、バタフライ50mレース終わりだな。中野出番だよ。」

中野「おっし!久々に腕がなら〜!」

糸川さん「さすが中野さん、迫力ある。」

僕「空手じゃないぞ!水泳だぞ!」

中野「おう!」ガッツポーズ!

僕「こういう人は、やはりチームの先鋒だな。みんなに勇気を与える。」

唯コーチ「いいね!いいね!」

中野は、スイムキャップとゴーグルを付けて、プールの水に入ります。

中野は3コース。

水の中からスタートです。

実は、飛び込みの練習が間に合わずバタフライ100mを練習するのがやっとでした。

中野「ん?周りはみんな飛び込みか〜」「上等だぁ〜」

レース前、全選手スタート位置に並びます。

ヨーイ!

ピッ!

周りが飛び込みます。ドボ〜ン!!! 

中野もスタート!

壁キックからのドルフィンキック!

12m半分くらいで浮上!

バタフライに入ります!

周りは・・25mのタッチターンを全員がしてます。

1コースが一番早い!37 m越えた。

中野は、25mのタッチターン!壁キックのドルフィンキック!

周りは、40mを越えている。

トップ1コースは、既に50mタッチターンを終えて、62mまで進んでいる。

中野は、37m手前で浮上しバタフライ!2レーン離れたトップとすれ違う。

僕「中野ー!がんばれー!」

糸川さん「中野さ〜ん!ファイト!」

唯コーチ「がんばれー!」

みんな大声で応援!

中野は、50mタッチターン!壁キックしてドルフィンキック!

疲れてきたのか5mで浮上する。

周りは、75mタッチターンを続々としている。

中野は、70m辺りを通過。

僕「少しスピードが落ちてきたな。」「がんばれ〜!」

糸川さん「中野さん凄いスピード!いつの間に100mあんなにスピード出せるようになったのかな?」「中野さーん!凄ーい!」

唯コーチ「さすが中野さんですね!本番凄い!自己ベストいきそうです。」「がんばれー!」

1コーストップがゴールです。

6コース、ゴール。

5コース、ゴール。

隣の4コースがゴール!

隣の2コース、ゴール!

周りの歓声がし、次第に静かになります。

僕「がんばれー」

糸川さん「中野さーん」

唯コーチ「自己ベスト更新!」

周りが静かになってる中、僕らのチームは目立つように歓声を上げている。

中野が疲れたバタフライでようやっとゴール!

「やったぁ〜!」僕と糸川さん、唯コーチは歓声を上げる!

中野は、プールの中で立ち、疲れた表情でゴーグルを取り、みんなを見ました。

僕、糸川さん、唯コーチは、ガッツポーズ!

周りのチームは、各々で出場選手を称え合ってます。が、一部の人達が僕達のドベチームが盛り上がってるのをチラチラ見ています。

中野は、プールサイドに上がり僕達のところに来ました。

中野「いやぁ〜やっぱり75mが限度っす!それを越えたら、疲れて力がだせなかったっす!」

僕「いや、100mを自己ベストで泳ぎきって、みんなびっくりしてるよ。しかも自己ベスト1分15秒だよ。」

糸川さん「中野さん、すごい進歩ですね〜練習でも100mは泳げるようになってたけど、今日はスピードが速かったです。」

唯コーチ「さすが日本チャンピオンですね!本番に強いです。」

僕「次に繋がる泳ぎだったよ。」

中野「みんなありがとう!まあ、ドベだったけどね!」

糸川さん「じゃあ、次は私ね!」

バタフライの競技が続く中、糸川さんは緊張してきたようです。

まあ、生涯初の競技大会なので気合は入ってますが、緊張はチーム内では一番大きいと思いました。

 ついにバタフライ競技が終わり、背泳が始まりました。

糸川さんは、水着の上に着ていた上着を脱ぎます。

唯コーチ「糸川さん、相当練習したから大丈夫!練習は嘘つかないですよ。」

糸川さん「ありがとう。唯コーチ!」と笑顔で言います。

いよいよ糸川さんの番。

背泳100mが来ました。

糸川さん「じゃあ、みんな行って来るね!」と言います。

中野「糸川さん、がんばれー大丈夫!」

僕「大丈夫!チームの仲間がいるよ!」

唯コーチ「応援してますよ!」

糸川さんがガッツポーズ!プールへ入ります。

「ドボ〜ン!」

糸川さんも3レーンに入りました。

背泳ぎは、全選手水の中からスタートです。後ろ向きに構えます・・・・・

ヨーイ!

ピッ!

一斉にスタートしました!

全員が潜水で、バサロキックで進みます。

バサロキックとは仰向けのドルフィンキックです。 

糸川さんのバサロキックは、速い! 

中野「おっスタートいい感じだ!」

僕「さすが!」

唯コーチ「がんばれ〜!」

糸川さん5m越えると浮上して背泳ぎに入ります。

順位は、わりと前の方。

2位だ〜!

ほぼ全員が並んだ状態だけど2位。

隣の2レーンがトップ。

僕「全員五分五分って、とこかな?」

ターンが来ます。トップの2レーンがうつ伏せになり、前転してからクイックターンをします。

糸川さんも、うつ伏せになり、前転します。

が、遅い!

中野「やはりターンは、もう少し練習がいる感じだな。」

僕「背泳のクイックターンは、難しいよね〜」

唯コーチ「がんばれ〜がんばれ〜!」

糸川さん、壁キックからバサロキックに入り5m程で浮上します。

一部の選手はバケットターンをしています。

僕、「クイックターンからのバサロキックは僕も苦手だな」「でも糸川さん綺麗に出来てるね。」

中野「さすが唯コーチの指導だ!」

唯コーチ「かなり練習しましたね!」

糸川さん順位は4位。

背泳ぎを続けます。

50m手前、うつ伏せになり、クイックターン!

隣の4レーンはバケットターンをします。

隣は、バケットターン!

糸川さん壁キックでバサロキック。

隣も壁キックからバサロキック。

回転のスムーズさが、隣が早く糸川さん抜かれます。

5mで両者、浮上して背泳ぎに入ります。

トップは、2レーン!

75mクイックターンを終えて背泳ぎをしています。

速い!糸川さん5位の位置。

周りが75mターンに入る中、糸川さんも75m地点の壁に近づきます。

僕「疲れてきたかな。少しスピードが、落ちた。」

中野「大丈夫!がんばれ〜俺達がいるぞ〜」

唯コーチ「ファイト〜がんばれ〜!」

糸川さんうつ伏せになり、前転してクイックターン!

ワンテンポ遅い。

壁キックからバサロキック!

ターンをした選手は、バサロキックから浮上します。

糸川さんもバサロキックから浮上します。

糸川さん6位になります。

糸川さん、背泳ぎを力強くします。

6レーンの5位の選手とは僅かな差です。

6レーンの選手と段々差がひらいていきます。

中野「イケイケーがんばれー!」

僕「がんばれ〜イケー!」

唯コーチ「がんばれ〜がんばれ〜!」

周りの応援よりもかなり賑やかな応援で目立ちます。

6レーンの選手!ゴール!

糸川さん95m地点手前まで背泳ぎで進みます。

中野「あと少しだ!ガンバレ〜!」

僕「イケイケー!」

唯コーチ「ラストラスト〜!」

糸川さん!ゴール〜!「やった〜!!!」

みんなでジャンプして喜びます!

糸川さん、6位。

糸川さんは、ゴーグルを、取ってこちらを見ます。

僕と中野と唯コーチは、糸川さんに手を振ります。

糸川さんは、水から上がりこっちに来ました。

僕「おつかれ〜」

中野「大健闘だったよ。」

唯コーチ「練習した甲斐がありましたね〜」

糸川さんは、目が少し熱くなっています。

糸川さん「でも少し悔しいですね・・・」

中野「最初は、うまくいかないものなんだよ。」「俺も最初はうまくいかなかったよ。空手だけど。」

糸川さん「・・・」

僕「今回は上出来だよ。次に繋がる結果だよ。」

糸川さん「そうですね〜でもドベになっちゃった!」苦笑いをします。

唯コーチ「私もデビューは、ドベでしたよ。

糸川さん「えー!唯コーチ負けたことあるんですか?」

唯コーチ「何回も負けたことありますよ。」「でも、そのあと頑張ったから負けなくなりました。」

糸川さん「じゃあ、私も頑張ります!次は1位になって周りをビックリさせますね!」と笑顔で話します。

僕「その意気その意気!」

中野「糸川さん、おつかれ!」

唯コーチは、ニコニコしてます。

周りの選手達は、ドベなっている僕等のチームを意識してます。

向こう側のプールサイドで立っているこの場所に似合わないスーツ姿の男が、こちらをじっと見てます・・・

次は、僕の番です・・・

つづく・・・

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