16.過去の自分に勝つ!
※この話は、実話をもとにしたフィクションです。
蟹マスターズ大会が、競技が中盤くらいで、休憩が入ります。
僕は、水着の上にTシャツを着て、更衣室へセームタオルを取りに、プールと更衣室を繋ぐ廊下を歩いていました。
競技を待っている選手は、プールサイドで、上半身にTシャツを着ている人が最初は多かったですが、競技をしたあとは、水着のままで居る人が多かったです。
廊下を歩いていると、見覚えである男性と目が会いました。
男性「おっ久しぶりだな。」
僕「ん?」
男性「さっきから見たことある奴が泳いでいるなと、思って見ていたら、海くんじゃないか。」
この男性は、僕が5年ほど前に海で行うマリンスポーツのウェイクボードの仲間に混ぜてもらっていた時のリーダー格の男性です。
名前は、佐山さんという15年、歳上の男性でスポーツは万能みたいです。
スポーツには、自信があり僕を見下した様子で接してくる人でした。
友達の会社のスキー旅行に僕は、混ぜてもらった時に、佐山さんもそこにいて、僕にスキーを教えてくれました。
「こいつは、見込みがある」と言われて夏に行う佐山さんの船でやっているウエイクボードに、誘ってくれたという繋がりです。
少し見下した話し方をする感じの人で、佐山さんのウェイクボードの腕前は、ボードで滑りながら180°体を縦に回転出来るか出来ないかくらいのレベルです。
蟹マスターズ大会での、佐山さんの水着は、ポリエステルで出来たダボッとした膝まである水着で、どちらかというと短パンに近い水着です。
蟹マスターズは気楽な水泳大会で一般の人も出やすい為、ダボッとした緩い短パン水着も認められています。
当然、水の抵抗は増えます。
佐山「よっ久しぶりじゃのう。」
僕「久しぶりです。」
佐山「海くんも、マスターズに出てるのかぁ〜」
僕「そうなんですよ。スイミングクラブで水泳を、習っていてその流れで大会にでようと思ってエントリーしました。」
佐山「俺は、水泳は興味なかったんだが、知り合いの水泳してる奴に誘われてエントリーしたんだよな。」と言い、「まっ、ここに来たら水着の姉ちゃんが見れるから、暇はしないな。」と、相変わらず女性に目がない性格です。
僕「競技の調子はどうですか?」
佐山「俺のメンバーに男の速いやつがいて、そいつは成績はいいんだけど、俺は水泳には興味なかったんだが、遅いとカッコ悪いんで、少し練習してクロール100mに出たよ。」「2位だったよ。」
僕「成績よかったですね」
佐山「水泳好きではない俺にしてはいい成績だよ。」
僕「2位は、良いですね〜」
佐山さんは、僕の全身を見ながら話してきます。
佐山「ん〜・・本格的な格好してるけど・・・海くんのチームは、いまひとつ成績が伸びかねてるね〜」と言い「知ってる顔だったから競技を見ていたけど、素人のチーム?」
僕「・・・半分そんな感じです。」
佐山「ふぅ〜ん」「まあ、誰でも出られる大会みたいだからね!・・お互いベストを尽くそう。」
僕「はぁ」と返事をすると佐山さんは、プールのある方へ歩いていきました。
こういった僕に対しては見下した話し方をする人で、佐山さん自身が僕を見下しているようです。
でもウエイクボードでは、僕は縦に180°の回転は出来なかったけど、佐山さんよりも練習量少なかったわりに、あっさり大ジャンプを成功させたりと、佐山さんは気に入らない様子でした。
なんだかんだで5年前に、ひと夏だけウェイクボードに参加しただけで、そのあとは行きませんでした。
佐山さんとは、それだけの付き合いでしたが、僕はあまり話したくない人でした。
更衣室に行って、プールサイドに帰ってきた僕は、中野と糸川さんと唯コーチが待ってるチーム席に戻りました。
中野「海さん、遅かったね?」
僕「いや〜知り合いと会っちゃって・・」
唯コーチ「知り合いですか?」「水泳関係?」
僕「いや、前にウエイクボードをやってた時があって、その時の人だね。」
糸川さん「海さん、ウエイクボードやってたんですか。かっこいいです。」
僕は少し照れながら「いやね〜あまりいい思い出はないんだ。」「どちらかと言うと、あまり会いたくない人かな・・」
中野「大丈夫、大丈夫。嫌な奴は、世の中、たっくさんいるもんだよ。誰でもいるからな。」
唯コーチ「私も会いたくない人いるから大丈夫ですよ。気にしないで。」
糸川さん「そうそう。私達はチーム!仲間です。」
僕は、少し安心しました。
中野「まあ、いざとなったら俺に任せてくりよ!」「まあ、ないだろうけどな。」と、笑いながら中野は言いました。
そして、蟹マスターズ大会の後半が始まり、平泳ぎの競技が始まりました。
今回はチーム全員、チームメドレー以外、個人種目は各1種目しかエントリーしておらず、しばらく待って僕の平泳ぎ500mの番が来ました。
僕は、Tシャツを脱ぎゴーグルとスイミングキャップを、持ちました。
僕「では、皆の衆行ってきます!」と、言います。
中野「なかなか余裕があるじゃないか?がんばれー!」
糸川さん「海さーん!がんばれー!自己ベスト!」
唯コーチ「私達がついてますから、大丈夫です!頑張って!」
僕は、ガッツポーズをしてプールへ向かいました。
僕は3レーン目、飛び込み台の横に立つと、隣にダボッとした長めの短パンを履いた選手が立ちました。
見た事ある人で、名前は忘れてしまいましたが、ウエイクボードに一緒に参加していた佐山さんの連れで、元ラグビーをやっていた歳上の男性でした。ゴツい体をした強そうな人です。
男性「よっ!ひさしぶり!俺、きみの名前忘れちゃったけど隣同士、頑張ろうぜ!」
僕「はぁ」と返事をしてスイミングキャップを被りゴーグルを頭に付けてプールへ入りました。
男性は、スイミングキャップとゴーグルを、付けてプールに入り話し掛けてきます。
男性「レース中、きみのチームみていたら偉く、かわいい女の子連れてるね〜いいね〜」「まあ、素人同士がんばろう!」
僕「はぁ」と返事してゴーグルを付けました。
僕は、隣の4レーンを意識しながらスタートになります。
さて、競技開始です。
僕がいる3レーンと佐山さんの連れの男性4レーンは、入水してプールに入ったままのスタート。
あとの1・2・5・6レーンは飛び込みスタートなので飛び込み台に立っています。
スタートは他の選手に遅れをとると、思いました。
さて平泳ぎ500m。
ヨーイ!
ピッ!一斉にスタート!
僕は、壁キックから、蹴伸びをし水中で両腕で水を掻きます。
平泳ぎ独特のスタートです。
5mで浮上します。
隣の4レーンも同じように浮上します。
両者、平泳ぎに入ります。
あとの選手は、既に平泳ぎをしています。
僕は、平泳の息継ぎで顔を水面に出した勢いで体を水に入れ、うねりで泳いでいきます。
4レーンと並んでいましたが、僕が徐々に前に出ていきます。
4レーンも焦ったのか、動きが速くなってきました。
25m。僕は壁をタッチし体を反転させタッチターンをします。壁キックをして蹴伸びをします。
4レーンも壁タッチし、ターンをします。が、僕がタッチターン後、蹴伸びが速い。
4レーンを、突き放します。
僕は、蹴伸びを5mで浮上し、平泳ぎを始めます。
僕の泳いでいる視界には4レーンは見えません。
そのまま、うねりを使った平泳ぎを続けていきます。
呼吸の際、顔を上げると中野と糸川さん、唯コーチが手を上げて応援してる声が聞こえました。
50m。タッチターン!体をひねり、壁キックから蹴伸びをします。
4レーンは、45m地点を過ぎている状態。差がついています。もう敵ではありません。
トップが見えます。75mターンをしています。1レーンがトップのようです。
僕の前は5レーンです。あまり差はないみたいです。
同じくらいのスピード。そのまま75m壁にタッチ!体をひねってタッチターン!壁キックから蹴伸びをします。
4レーンは72mほどを過ぎたところ。
5レーンは・・・差が縮まってきている感じ。体を浮上させ平泳ぎをします。
87mあたりを過ぎて息継ぎで顔を上げると唯コーチの「落ち着いて〜」と言う声が聞こえました。
これはスピードを意識しないでマイペースで行けという我らが唯コーチの指示に違いないと思い焦らず今のスピードをキープします。
100m。タッチターン!体をひねり、壁キックから蹴伸びをします。
気づかないうちに5レーンと並びました。
もしかして、僕の方が速い?浮上して平泳ぎに入ります。
5レーンと並んでいる。スパッツ型の水着を履いた選手が泳いでいます。
その前の順位に位置する2レーンの選手は少し離れていますが、もしかすると射程範囲内か?100mの折返しから、半分くらい泳ぐと徐々に5レーンを抜きました。
僕は、よし!と思いました。
150m。タッチターン!体をひねり、壁キックから蹴伸びをします。あまり体は振れずいい感じです。
トップの1レーンとすれ違いました。流石に速いな。
僕は蹴伸びから浮上し平泳ぎに入ります。でも、2人も抜いたから、みんなびっくりするかな?と思いながら順位変わらず。
200m。タッチターン!体をひねり、壁キックから蹴伸びをします。
沢山、泳いでいる為か水の流れが変な感じになり、体が振れます。
慌てず浮上し平泳ぎをします。
もはやトップは気にせず。
息継ぎをする度に、周りの応援の声が聞こえ賑やかです。
何となく中野、糸川さん、唯コーチの声が聞こえます。
順位変わらず、250m。タッチターン!体をひねって壁キックから蹴伸びをします。
浮上し平泳ぎをします。
隣、前方に人が泳いでます。4レーンです。
佐山さんの連れに、50m差をつけました。
2レーンの選手は・・・段々、近づいています。差が縮まってきてます。
1周遅れの4レーンと僕より前の2レーンの選手が近づいてきてるまま、300m。タッチターン!体をひねり、ロケット壁キックー!蹴伸びをします。
ロケット壁キック!僕が勝手に付けた名前です。
浮上し平泳ぎをします。
4レーンは、抜きました。
2レーンは、横並びです。
徐々に僕が離していきます。
4レーンの男性を、佐山さんがみているだろうな。
僕も当然見られている。素人チームではない。
「かわいい女の子連れてるね〜」の言葉を思い出す。
糸川さんと唯コーチどっちの事を、言ったんだろう?と余計な考え事をしながら350m。タッチターン!体をひねって、壁キックから蹴伸びー!浮上して平泳ぎ。
息継ぎをして顔を上げると「マイペース!」と唯コーチの声がした。
次の息継ぎで顔を上げると「イケイケー!」と中野の声が聞こえた。
また、息継ぎで顔を上げると「がんばれーがんばれー」と、糸川さんの声がしました。
猛烈なチームの応援に僕は、幸せを感じます。
また、息継ぎをすると、「うみさーん」と唯コーチの声がしました。
唯コーチ・・なかなかいいなと、思いながら400mの壁をタッチ!体をひねり、壁キックから蹴伸びをします。
只今3位!だけど次の6レーンは結構速い!差はあまり変わらず。少し、ペースを上げます。
息が少し上がりましたが、平泳ぎが得意な僕には問題なし!このまま最後まで持っていこう。
450m壁にタッチ!体をひねりタッチターン!蹴伸びから浮上します。平泳ぎに入ります。
あれ?6レーンとだいぶ差が縮まってきている。
息継ぎで顔を上げると、僕のチーム応援団が「イケーイケーイケー!」と凄い勢いで応援している。
さすが元空手王者と元水泳女王!
半端ない応援だ!周り応援も負けてないけど、うちの応援は、それ以上だった。
僕は最後の力で6レーンと差を縮めて抜くことは出来なかったが、ゴールしました。
顔を上げると、中野が「3位ー!」
糸川さんが「やったー!」
唯コーチが「イエーイ!」と何言ってるのか、わからないけど大歓声で喜んでくれた。
水から上がると、まだ4レーンは泳いでいた。
僕は、スイミングキャップとゴーグルを取り、みんなのところへ行きました。
中野「海さん、さすがだぜ!3位!すげー!蟹いただきだ!」
糸川さん「3人抜いたの凄いです!」
唯コーチ「やりましたね!」みんな笑顔でした。
僕「みんなのお陰だよ!ありがと!」
平泳ぎ500mは、僕が3位になることが出来ました。
さて次は、我らが唯コーチ。クロール700mです。
僕達からプールを、挟んだ反対側にスイミングクラブで泳いでいた。トライアスロン優勝者の女性が見えました。
中野「あれ、スイミングクラブに来てるトライアスロンチャンピオンじゃないの?」と言いました。
糸川さんと唯コーチは「えっ?どこどこ?」と言いました。
唯コーチのレース前に少し不安が残ります・・・
つづく・・・