35.不思議な科学者!植田さんチーム入り

※この物語に登場する組織やルールは架空のものであり、実在する組織とは無関係のフィクション作品です。

※この物語の舞台は、実世界におけるITUやJTUが存在しない、完全にオリジナルな異世界です。ここではトライアスロンは独自の歴史と発展を遂げ、従来の枠にとらわれない革新的な競技となりました。その結果、最高権威を持つ組織として誕生したのが「インフィニティ・トライアスロン・フェデレーション(ITF)」です。ITFは、自由な装備選択や革新的なルールを推進することで、選手たちが個性と戦略を存分に発揮できる環境を提供し、この世界におけるトライアスロン競技の基盤となっています。

ーーーーー登場人物ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

近江 海(おうみ うみ)      チームTRY RAXのリーダー。

中野 直也(なかの なおや)    元空手道全国大会優勝者。圧倒的な根性と瞬発力が売り。

糸川 陽子(いとかわ ようこ)   会社事務員。地道な練習を重ねる、努力の人。

速水 唯(はやみ ゆい)      元学生水泳全国大会優勝者。男性にも負けない伝説的な泳力を持つ。

植田 亮一(うえだ りょういち)  スポーツメーカー「ファルコンスポーツ」の技術者。不思議な科学者。

ーーーーーーーーーーー本編ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

     ーカフェ・ソラリスにてー

アクアスロン練習会から少し時が経ち、猛暑の夏もいくらか落ち着き始めたある日曜日の夕方。僕たちは、お決まりの集合場所、駅前通りにあるオシャレなカフェ「ソラリス」に、久々に全員が顔をそろえた。


実は少し前から、「チームサウルス」という名前の変更を考えていた僕たち。

色々と議論を重ね、今回は「チームTRY RAX」に決定した。
名前の由来は唯コーチがずっと大切に持っている、トリケラトプスの人形から取ったものだ。

唯コーチの学生時代の女性コーチがオリンピックを目指した実力者だったのに、何らかの理由で選ばれず、しかし実際には選ばれた選手以上の速さを持ち合わせていたという逸話を持っている。コーチからいただいた人形がこのトリケラトプスだ。

そのすごさにあやかって、この縁起のいい恐竜をチームの象徴と今までしていたのだが、チームの人数が増えてグレードアップしてきたことを機会にきっちりとしたチーム名を唯コーチが提案してくれたのだ。

新チーム名の話になるや否や・・・
中野「待ってました!トライアスロンと恐竜をミックスしたんだよな!」と声を上げた。彼は無類の恐竜好きではないが、パワフルなイメージに興味をそそられるみたいです。
一方で唯コーチは、チーム名が自分が持つ人形の存在をしみじみと噛みしめている様子だった。

糸川「新しいチーム名って、なんだかワクワクしますね!」と目を輝かせている。チーム名が変わるだけで、これからの練習や大会の雰囲気がガラッと変わりそうだ。そんな期待感が、みんなの心を躍らせている。

 ところがそのタイミングで、唯コーチがさらりと「私、実は無敗なんです」と言い放った。

みんなは「えっ!?」と声をそろえて驚いた。すでに伝説的な存在なのに、さらにまだ底知れぬ能力があるのか、と中野が目を丸くする。
唯コーチいわく、彼女が学生時代に水泳で負けたことは一度もないのだという。
幼少期から始めた水泳で、その天性のスピードを武器に学生大会では常に優勝を勝ち取ってきた。その経歴が受け継がれ、彼女の持っているトリケラトプスの人形は、唯コーチの尊敬するコーチと彼女自身の偉業を象徴するような宝物なのだ。

僕たちチームサウルスがいつも利用するカフェ「カフェ・ソラリス」は、夜遅くまで営業していて、落ち着いた照明と木製インテリアが心地よい。

中野「おう海さん、俺は早速ケーキを頼んだぜ。最近甘いもんが恋しくてな。」

糸川「私も同じケーキセットにしちゃいました。夜だけど、まいっか〜。」

「ふふ。みんなで甘いもの食べるのって、ちょっと罪悪感あるけど楽しいわよね。」

今日は「ファルコンスポーツ」の技術者、植田 亮一さんを招待している。

彼は蟹マスターズ水泳大会で新開発のスーツをテストしていた人物で、僕がランニング中に何度か会ううち、「チームTRY RAXに入りたい」と話を持ちかけてきた。

糸川「海さん、植田さんって方、本当にうちのチームに入りたいんですか?」

「うん。トライアスロンをやりたいし、製品をテストしたいんだって。」

そんな話をしていると、カフェの扉が開き、スーツ姿の堅苦しい雰囲気の植田さんが入店してきた。

「植田さん、お疲れさま。こっちこっち!」

植田「こんばんは、皆さん。ありがとうございます、こんな時間ですが遅れてすみません。」

中野「おうっ!気にすんなっ。ほら、座れよ。」

唯コーチは明るい笑顔で「チームTRY RAXへようこそ!」と両手を広げた。ちょっと大げさだが、唯コーチのもつパワーが場を盛り上げる。

植田「あれ?チーム名は?」


僕「変えたんだよ。もう少しトライアスロンチームに似合った感じでチーム人数も増えたしね・・唯コーチの人形トリケラトプスにあやかった名前ですよ。」

植田「そうでしたか・・なるほど」

糸川「今オーダーしたとこなんで、植田さんも何か飲んでケーキとか食べてくださいね。」

植田「じゃあ私はアイスコーヒーを・・・・」

会話が一段落すると、僕は本題へと話を向けた。

「じゃあ、改めて植田さんが“うちのチームに入りたい”って言ってくれてる件を、みんなに説明してあげてください。」

植田「まず・・・私は、スポーツメーカー『(株)ファルコンスポーツ』の技術開発部に所属しておりまして・・」

植田さんが切り出すと、中野が「知ってる知ってる。あのウェットスーツか何かめちゃくちゃハイテクなやつ作ってるんだろ?」とツッコむ。

植田「そうです。私たちはランニングシューズや水着などのスポーツ用品を製作していて現在は新型トライスーツを開発中です。会社が小さいのであまり広範囲な開発はできませんが商品が、すごく良いものが揃っています」

僕「他のメーカーが出しているすごい商品はファルコンスポーツが手がけた商品が多いみたいだよ。割と知られていない事実らしいよ」

中野「おお!そりゃすごい!」

植田「はい、現在開発中のトライスーツは今の主流のスパッツ型ではなくて、ハイレグカットの女性用競泳用水着型トライスーツと男性用の丈が短いタンクトップ+ビキニの2ピース型水着のトライアスロンウェアですね。生地に曲線が多めで、その曲線が多いほど水や空気を整流する効果が高いという材質と形になっています。」

「女性用はワンピースですが背中とかビキニラインなどに微妙に曲線を作っています。男性用も2ピースにすることで曲線をたくさん作っています」

糸川「なんだか、わかりにくいようなわかるような感じですけど、超最新型という感じで凄そうですね!」

植田「はい、弊社はトライアスロンウェアの新素材を開発しており、超最新型のテストを兼ねて私はチームに参加したいのです。」

中野「具体的にどんな特徴があるんだ?」

植田「はい、弊社の理論では、“曲線が多いほど小さな渦ができましてその渦は数千から数万にもなりその渦からジェット噴射が起きる”んです。なので曲線がたくさん作りやすい2ピースやハイレグカットやハイカットに、こだわっています」「ワンピースと2ピースがどちらが有効かは現在わかりにくいですが女性用、男性用を分けるために女性用はワンピース、男性用は2ピースで開発をしています」

唯コーチ「今の主流からは考えられない形状ですね」

糸川「逆に新鮮さがありますね」

中野「なるほどな」

糸川「渦で推進力・・・すごいですね!」

唯コーチ「私たちの体型に合わせて微調整もできますか?」

植田「もちろんです!商品化すれば受付生産予定です」

中野「な・なんだか・・植田さんすげぇ〜なっ」

唯コーチ「私はハイレグには慣れてるけど、最近の人はハイレグって使う人が少ないけど、商品化しても売れるんですか?」

中野「俺はスパッツ型派だけど、昔のトライアスロンスタイルはタンクトップにビキニタイプ2ピースだからな。多分、流行ったらなんでも世間はOKじゃないか〜」

植田「それなら大丈夫です。うちのこの商品で、そのうちオリンピックで金メダルを撮る予定ですから。トップ選手が金メダルを取れば流行ります。」

一同「ええ〜なんでわかる?」

植田「そのくらい自信があります」「現在あらゆるスポーツで金メダルをとっている選手の道具はうちで開発して他のメーカーからでしたものですよ」

(これは架空の世界のお話です。実世界と法律や規定も違います・・・)

「それに植田さん自身もトライアスロンやりたいんですよね?」

植田「はい。僕はラン10kmを58分くらいで走れますが、スイムとバイクはまだ初心者。だけど、練習しながら製品テストもしたいんです。」

「なるほど。僕たち、結構素人多いですよ? 大丈夫なんですか?」

僕「正直、プロでも実業団でもない、いわゆる“社会人趣味アスリート”な僕たちでいいのだろうか?」と疑問植田さんに言った。

すると植田さんは、まっすぐこちらを見て言う。

植田「いえ、そこがいいんです。無名な普通の社会人が圧倒的な結果を出せば、私たちファルコンスポーツの技術が証明されるんです。それに練習風景も含めてリアルなモニタリングが可能ですし」

それから・・・

一通り話がまとまったところで、店員さんがケーキを運んできた。カフェラテ、コーヒー、紅茶、そしてチョコレートケーキやベリー系のケーキがテーブルに並ぶ。植田さんはモンブランを選んでいた。意外と甘党らしい。

中野「じゃあ、もう決定だな!」中野が言葉をまとめる。

一同「ようこそ植田さん!チームTRY RAXへ!」

植田「ありがとうございます! 皆さんに追いつけるよう頑張ります!」

植田さんは深々と頭を下げた。その表情には安堵の笑みが浮かんでいる。

中野「よ〜し!これでますます面白い展開になりやがるぜ〜!」

中野が更に声をあげ、「うちのコーチは元日本チャンピオン、俺は空手日本一・・・そして植田さんは天才技術者! これ以上ない強力メンバーになったな!」と拳を突き出す。

一同「お〜〜〜〜!」とみんな拳を作って高々と手を上げる!異様な雰囲気がカフェに漂った・・・

糸川「そうです!」糸川さんも微笑みながら、「私もついていけるように頑張らなきゃ!」と決意を言っています。

こうして、不思議な科学者・植田さんは晴れて新しくなったチーム「チームTRY RAX」のメンバーに加わったのだった。

少し変わった技術者と、元水泳日本一や元空手日本一たちが織りなす新たな化学反応が、どんな展開を生むのか。

僕たちのトライアスロンへの道は、いよいよ面白いことになりそうだ。

つづく

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