40.第21回島の国トライアスロン大会(1)ーー灼熱の海に散る火花ーー



※この物語に登場する組織やルールは架空のものであり、実在する組織とは無関係のフィクション作品です。

※この物語の舞台は、実世界におけるITUやJTUが存在しない、完全にオリジナルな異世界です。ここではトライアスロンは独自の歴史と発展を遂げ、従来の枠にとらわれない革新的な競技となりました。その結果、最高権威を持つ組織として誕生したのが「インフィニティ・トライアスロン・フェデレーション(ITF)」です。ITFは、自由な装備選択や革新的なルールを推進することで、選手たちが個性と戦略を存分に発揮できる環境を提供し、この世界におけるトライアスロン競技の基盤となっています。
大会名も架空のものです。

ーーーーーーーーーーーーー登場人物ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

近江 海(おうみ うみ)      チームTRY RAXのリーダー。

中野 直也(なかの なおや)    元空手道全国大会優勝者。圧倒的な根性と瞬発力が売り。

糸川 陽子(いとかわ ようこ)   会社事務員。地道な練習を重ねる、努力の人。

速水 唯(はやみ ゆい)      元学生水泳全国大会優勝者。男性にも負けない伝説的な泳力を持つ。

植田 亮一(うえだ りょういち)  スポーツメーカー「ファルコンスポーツ」の技術者。不思議な科学者。

岬 智子(みさき ともこ)    島の国トライアスロン大会の常連優勝者。他大会でも優勝をする実力派。チーム鉄神51.5のメンバー。




ーーーーーーーーーーーーーーーー本  編ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

8月24日(日)午前3時30分。

まだ外は深い闇に包まれている。

だが、僕――近江 海(おうみ うみ)は、もう布団の中で目を開けていた。

昨夜はほとんど眠れなかった。

理由はひとつ、「第21回島の国トライアスロン大会」を迎える興奮と、今年は僕らチームTRY REXは出場しないが、想像を超えるハイレベルな戦いを目撃できるという期待感が強すぎたからだ。

隣のベッドを見ると、仲間の中野 直也がすでに起きてベッドに腰掛けている。

中野「うおお〜!!眠れねぇな〜」「海さん、おはよう・・」と低い声でつぶやく。

僕らは前夜のうちに会場近くの宿へ入り、今はまだ深夜というべき時間だが、すでに体はじっとしていられない状態だ。

昨日のカーボパーティーでの熱気、そして地域のトップアスリートがたくさん参戦する・・・

何より、地元の女王・岬 智子(みさきともこ)が5連覇中だったが、今年はオリンピック出場経験のあるプロ選手“蒼井 颯那(あおい そうな)”や、怪物的な変人実力者“嘉栗(かくり)”、ロングディスタンストライアスロン実力者の”八王子(はちおうじ)”が初参戦する。

他にもたくさんの選手がいるがいづれもアスリート的な体格をしている選手ばかりだ・・・

「島の国トライアスロン」史上、最もレベルの高い激突になりそうだと、地域メディアは騒いでいる。

僕はそっと布団から起き上がって深呼吸した。

海「空気が重いなぁ〜」

昨夜の雨は一瞬だけで止み、湿度が上がったせいか、ホテルのエアコンの音が耳に感触で仕方がない・・

海「中野、こんな時間だけど、4時にロビー集合しようか。朝食を軽く摂って、4時半すぎには会場行こう」

中野「おう、そうだな・・俺らは出場しねぇのに、やけに早起きしてんな・・」と苦笑い。

でも中野の瞳は興奮でギラついている。さすが彼も元スーパーアスリートなのだ。無敵の元空手日本一だった中野は、大きな戦いを前にすると血が騒ぐみたい。

ーーホテルロビーにてーー

午前4時

ロビーに降りると、すでに糸川 陽子と速水 唯コーチが待っていた。

糸川さんは白のパーカーを羽織り、すでに外出の準備は万端。

唯コーチは、水泳指導者らしく、動きやすいTシャツとショートパンツ姿だ。さすがスタイルが良いので良く似合っている。

一同「おはようございます〜」「おはよう!」と軽く声を交わし、隅のテーブルでコンビニおにぎりやバナナなどをかじって朝食代わりにする。さすが見学者。適当である。

そこに植田 亮一(ファルコンスポーツの技術者)も姿を見せる。

彼はいつもの七三分け髪型に、夏らしい薄手の黒色ズボンに、白色半袖ワイシャツとネクタイという、どこか中途半端なビジネススタイルで現れた。

海「植田さんその姿で行くの?」

植田「そうです。仕事も兼ねておりますのでビシッといきます。はい」

中野「暑そうだが植田さんらしいぜ!」

植田さんは、タブレット端末を手にして「皆さん、さあ出発ですね。はい」と頷く。

唯コーチ「さあ〜!今年はほんとにハイレベルなメンバーですね! なんか私まで緊張してきちゃう」と興奮を隠せない様子です。

糸川「私たちは出場しないけど、どんなレースになるか想像しただけでドキドキしちゃうね」

植田「私はトライスーツ研究のために、トップ選手の動きも観察したいです!ファルコン製 AIカメラ付きタブレット端末で撮影データが取れたら最高です。はい」

海「よし、それじゃ行こう!タクシー呼んでるんだよね?」

中野「おう!外で待機してるぜ!」

海「じゃ〜みんな行くよ!」

一同「ぉぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜〜ぉ」とみんな朝早いので小さな声で言う・・・・・・

――スタート会場――

午前4時30分

宿泊ホテルからタクシーで15分ほどで、ビーチ会場に到着。

まだ空は薄暗いが、すでに多くのスタッフやボランティアが動き出している。さすがスポーツの祭典だ。

大きなアーチやのぼりが立っており、「第21回 島の国トライアスロン大会」の文字がライトに照らされている。

選手たちは続々と到着中。

バイクを押しながらトランジッションエリアへ向かう人、受付ブースで最終手続きする人、大きなリュックを担いでいる人など、それぞれの動きが忙しそうだ。

上空にはドローンが何台も飛んでいて、ピロピロと警告音を出しながら撮影や監視を行っている。

中野「うわ、本当に大会運営側は本気だな。安全対策でAI搭載ドローンが導入されてるのは、すごいな・・・」と顔を上げて見ている。

上空で光を放っている大型ドローンと小型監視用ドローンが行き交っている。まるで未来のスポーツ大会のようだ。

車を降りて砂浜に足を踏み入れた瞬間、湿度の高さを感じる。気温はすでに28℃近いが、体感はもっと暑い。

日が昇るまで1時間もあるのに、この熱気は何だ・・と僕らは苦笑する。

スタート前

時刻は午前5時〜6時

選手は朝の試走などを終えつつ、バイクラックに愛車をセットし、ウェットスーツや水着の最終チェックをしている。

中には海辺でストレッチやアップをしている人も多い。

岬さんや鉄神51.5メンバーを探していると、すぐ見つかった。

彼女たちはすでにレースウェアを半分着て、アップを開始しているところ。

岬 智子:紫のハイレグカット型競泳用水着(トライスーツ)に上半身だけTシャツを羽織っている。脚はむき出しで、引き締まった筋肉がカッコよく見える。

榊原 翼:青のハーフスパッツ型トライウェア。バイクのスペシャリストであり愛車の調整を念入りにしている。

高橋 結城:黒のハイレグカット型ウェアで理論派ランナー。補給ドリンクを小分けに準備している。

藤原 涼子:ネイビーのスパッツ型競泳水着。オープンウォーター得意。肩を回しながら海を睨んでいる。

海「おはようございます! 岬さん、調子はどうですか?」

岬「おはよう〜。うん、いい感じ。今日の暑さには慣れてるとはいえ、さすがに例年以上かもね・・覚悟してるよ」

糸川「ほんとに、すでに蒸し暑いですね・・でも頑張ってください!」

岬「うん、ありがとう。応援の力は大きいよ!」とウインクを返す。

榊原は手を振って・・

柳原「よーし、私はバイクで仕掛けるよ〜!応援よろしく!」と笑う。

高橋は口数少なく、淡々と準備をしている様子だが・・

高橋「おはよう。暑さ対策してくれよな」と小さな声で言う。

藤原「私のスイム、注目しててよ! 絶対トップ争いに食い込むからね!」と自信満々。さすがアスリートだ。

ビーチ奥の方では、すでにプロ選手”蒼井 颯那(あおい そうな)”が、軽いジョグをしながらアップしている姿が見られる。

藍色のハイレグカットの競泳用水着(トライスーツ)を着用し、その上に薄手のパーカーを羽織っている。日が昇ったらパーカーを脱ぐのだろう。

彼女のアスリート的な顔立ちに、青い瞳に、黒髪を高い位置でまとめたヘアスタイルが目を引きます。

周囲のカメラマンが遠巻きに撮影しているが、蒼井は表情を動かさず黙々と体を動かしている。さすが・・・

一方でスタッフやスポンサー関係者が声をかけようとするが、そっけなく挨拶するだけで会話が続かない様子。まさに“氷の女王”の異名どおりだと僕は思いました。

中野「あれが噂の蒼井さんか・・・すげえな・・かっこいいじゃね〜か」と興奮気味だ。

他の選手「サインほしいけど、なんか絶対話しかけづらいな〜」と尻込みしている人もいるくらいオーラーがある。お忍びだが、それでもオリンピック選手だ。やっぱりすごい!

さらに会場を見渡すと、例の八王子がバイクの近くでストレッチしながら薄く笑っている。

黒いトライウェアに袖がついており、まるで筋肉が詰まった野獣のような大きな体格だ。

海「八王子さんも本気だな・・・この暑さでどうなるか・・」と僕はそう思った。八王子は気性が激しいから、何か荒れる展開になるかもしれない。

そしてもう一人、全身を黒の袖付きトライウェアで固めた男”嘉栗(かくり)”が、静かに目を閉じて呼吸を整えている。マインドフルネス瞑想をしている・・・・・周囲と全く交流せず、波の音だけを聞いているかのようだ。

糸川「嘉栗さん、あの鉄の肺の男だね。前のアクアスロン練習会で唯コーチとすごい泳ぎしてたねっ」と思い出す。

僕も、思い出しながら、あの強烈なラストスパートを見せた姿は衝撃的だった。

午前8時30分

ビーチの空気は完全に暑さが増し、気温計は33℃を指している。

選手は、それぞれトランジッションエリアへ入り、バイクとヘルメット、ランシューズなどをセットしに行く。

特定のゼッケン番号ごとにスペースが割り振られていて、そこに道具を置きにいくのだ。

僕らは柵の外から見守る。

昨日も観た光景だが、今日は500人の選手がわらわらと集まり、ピリピリとした緊張がみなぎっている。

スピーカーからアナウンスが聞こえてきた。

アナウンス「暑さ対策をしっかり行ってください」「給水所はスイム後すぐに用意してあります」など繰り返し告げている。

スタッフが氷や水を運ぶ姿も多い。

午前9時45分

ついにメインビーチでオープニングセレモニーが始まった。

大きなステージ上では実行委員長や県知事や市長が順番にマイクを握り、簡単な挨拶を行うと拍手が巻き起こった。

全選手は準備を完全に整え終わり、ステージを見ながら話を聞いている。

この緊張感が大会を盛り上げていく・・・・

僕ら観客エリアにいる人々は「いよいよか・・・!」と落ち着かない様子です。

アナウンス「さあ、皆さん!いよいよあと10分でスタートです!」と熱い声を上げると、ビーチ全体からざわめきが大きくなる。

午前10時

アナウンス「では全選手!スタートラインへ移動をお願いします。この島の国トライアスロンは全選手一斉スタートをします。スタート位置がとても長いのでバラけてスタートをお願いします!」というアナウンスが入り、広いビーチから海からスタートの選手は海に入り幅いっぱいに500人が横に散っていく・・・・

スタート合図は花火の音だという。

澄み切った青空に太陽がギラつき、気温はもう36℃に近い。

誰もが汗を噴き出す。

こんな猛暑の中、1.5kmのスイム→40kmバイク→10kmランのショートディスタンスを一気に駆け抜けるのだ。

倒れる選手が続出しそうで心配すら感じる大会。国内屈指の難コース!島の国トライアスロン大会がいよいよスタートする。

アナウンス「カウントダウン10秒前・・・」

スタッフの合図で一気にビーチが一気に静まりかえる・・・・

選手たちの視線は海へ、あるいは空へ向けられ、心を整えている。

僕は観客エリアから、全身にアドレナリンが出てくるような不思議な感覚に襲われ・・・

海「やばい、この緊張感!」と思わず唸ると・・

中野「俺もだぜ!」と目をギラつかせる。

アナウンス「3・・・2・・・1・・・」

ドォォォォォン!!!!ドォォォォォン!!!!ドォォォォォン!!!!ドォォォォォン!!!!

ものすごい花火音がビーチを揺るがし、同時に選手たちが一斉に海へ飛び込み猛ダッシュ! 

スイム開始だ。

「うおおおおおおおお〜!!」と選手や観客の雄叫びが入り混じり、砂浜が白い水しぶきに包まれる。

500人が同時に海へ飛び込む光景は、まるで津波か台風かというほど壮絶だ。

ここから、灼熱と波瀾の戦いが幕を開けた・・・・

つづく・・・


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