36.チームTRY REXの、とんでもラン練習!
※この物語に登場する組織やルールは架空のものであり、実在する組織とは無関係のフィクション作品です。
※この物語の舞台は、実世界におけるITUやJTUが存在しない、完全にオリジナルな異世界です。ここではトライアスロンは独自の歴史と発展を遂げ、従来の枠にとらわれない革新的な競技となりました。その結果、最高権威を持つ組織として誕生したのが「インフィニティ・トライアスロン・フェデレーション(ITF)」です。ITFは、自由な装備選択や革新的なルールを推進することで、選手たちが個性と戦略を存分に発揮できる環境を提供し、この世界におけるトライアスロン競技の基盤となっています。
ーーーーーーーーーーーーー登場人物ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
近江 海(おうみ うみ) チームTRY RAXのリーダー。
中野 直也(なかの なおや) 元空手道全国大会優勝者。圧倒的な根性と瞬発力が売り。
糸川 陽子(いとかわ ようこ) 会社事務員。地道な練習を重ねる、努力の人。
速水 唯(はやみ ゆい) 元学生水泳全国大会優勝者。男性にも負けない伝説的な泳力を持つ。
植田 亮一(うえだ りょういち) スポーツメーカー「ファルコンスポーツ」の技術者。不思議な科学者。
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今回から主人公の海は「僕」とセリフ前に表記せず「海」と表記します。よろしく!
ーーーーーーーーーーーーー本編ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
21:00 夜の市営運動競技場
昼間は子どもたちや市民スポーツサークルで賑わうこの場所も、夜21時を回ると人の姿はほとんど見えなくなる・・・・・だが・・今日は特なのだ。
競技場の一角にあるトレーニングルームのドアを「キィ…」と開けてみると――そこには、なぜか大勢(といっても5人だが)の人影が。しかも、ただならぬ雰囲気を放っていた・・・
競技場の400mトラックに足を踏み入れると、すでに5人が集まり、気合の入った様子でウォーミングアップをしていた・・・・ナイター照明に照らされた競技場のトラックで、夜の静けさの中、5人のシルエットが浮かび上がる。今夜の練習は400mトラックを使ったランニングメニュー。チームのメンバーはすでに準備を整えていた。
中野「おう!今日は唯コーチの“コネ”でここを借りてるんだよな」
リーダーの海は、白いTシャツに股下6cmのランパン姿。引き締まった筋肉質の体つきが目を引く。
海が緊張気味に口を開く。
海「そうそう。唯コーチの知り合いがここの管理人をしているそうだよ。」
唯コーチ「そうです!ここの管理人が私の大学時代の先輩でして、夜の空き時間ならOKって言ってくれたの」と笑顔で答える。さすが、元学生水泳全国大会優勝者の速水 唯コーチ凄いとみんな思う。
唯コーチは、白のノースリーブシャツに股下5cmのターコイズ色の短いランパンを穿いている。水泳で鍛えたしっかりとした筋肉と、適度な柔らかさを併せ持ち、しなやかなボディラインで女性らしさを表現している。
中野「いや〜夜の競技場は雰囲気あるねぇ〜“夜の闇を切り裂く俺様”って感じだぜ!!!!!」
元空手日本一の中野 直也が声を張り上げる。とはいえ格好は白のTシャツに股下15cmの黒のハーフスパッツ。本人いわく「動きやすさ重視」のスタイルだが、そのパワフルな筋肉質な太腿がギラギラしている!
糸川「私は・・暗いところだとちょっと不安かな〜でも頑張ります〜」
会社事務員の糸川 陽子が照れ笑いする。白いTシャツの上にはフード付きのパーカーを羽織り、股下10cmの短パンで落ち着いた可愛らしい雰囲気がある。しかし最近の練習量は侮れずない。チーム内では「努力の天才」と呼ばれ始めている・・・とか・・・!?
最後に・・・今回から正式入隊・・ではなくチーム入りしたファルコンスポーツ技術者の植田 亮一。Tシャツにややダボっとした股下15cmの短パンを穿き、「学生の部活帰り?」みたいな見た目だが・・その正体は新型トライスーツなど先端製品を次々に生み出す天才エンジニアだ!
僕らはチーム名を「チームTRY REX」と改め、トライアスロンでの飛躍を目指している。
しかし今日はトライアスロンというより純粋なランニング練習です。
唯コーチ「では、今日は私が主導でランニングメニューを作ったので説明するわね!」
海「唯コーチは現役の時は基礎トレーニングでランニングもしてたんだよね。」
唯コーチ「そうです。でも専門ではないですけどね。」
中野「俺もランニングは現役の時にしていたな。まあ意味不明に走っているだけだったけどな!」
糸川「まあ唯コーチは私たちの水泳コーチだし、ランニングのとこもある程度は知っているからランニングのコーチもすることになったんだよね。」
中野「なかなか説明的な会話になっているではないか・・ふふ」
植田「さて始めましょうか?」
一同「お〜〜!」と気合が入ります。
今日のランニング練習のコーチ役してくれるのは水泳コーチである全日本学生水泳選手権、日本一の唯コーチ。
水泳の選手だが現役はそれなりに陸上選手と一緒にランニング練習をした経験もある。一応、水泳選手。しかし僕たちよりは、まだ知識は豊富だ。
唯コーチはトラックの内側に立ち、手元のメモを読み上げる。
唯コーチ「まずは、動的ストレッチをします。肩回し、股関節ほぐし、ふくらはぎとアキレス腱の伸展を入れていきますよ!」みんなで唯コーチを見ながら動的ストレッチをしていきます。
中野が海に言う。「唯コーチがするとなんか凄い有名人選手の講習会みたいで得した気分だな・・」
海「まあ、唯コーチは昔は有名ではあったらしいけどね」と過去に唯コーチが水泳で有名だったことを話す。
中野「美人に有名か・・凄いな・・」
唯コーチ「では次は、ウォーミングアップですよ〜軽いジョグで1周400mを2周走りましょう。
と、唯コーチが先頭で走り出すとみんな続いて走り出す。さすがアクアスロン練習会で速かっただけあって軽い走りをしている。
唯コーチ「ペースはキロ7~8分くらいかな。特に最初の1周はゆっくりね。体温を上げて筋肉と関節の可動域を広げるのが目的だから」と言いながら白のノースリーブシャツに股下5cmの短いターコイズ色のランパンを履いて走りながら言っている。さすがに心肺機能が凄い!
白いTシャツに股下6cmのシアン色のランパン姿の僕、海が・・
海「それじゃ、ゆっくり始めるか・・・」と腰をひねりながらスタート。少し緊張気味です。
中野は、Tシャツに股下15cmの黒のハーフスパッツで、空手仕込みの立ち姿は堂々としている。
中野「おれは夜の闇を斬ってやるぜ!」とやけにテンションが高く、すでに小走りしながら肩を回して走っている。何やら独特の呼吸法で「フゥッハァッ」と声を出しながら走っている。
糸川さんは、フードつき白のパーカーにピンク色の股下10cmの短パン姿で、キョロキョロ周りを見つつも・・
糸川「夜のトラックって静かでいいですね・・・」と控えめな笑顔で走る。
運動が苦手だった過去からは想像つかないほど、彼女は地道な練習でスタミナをつけてきました。
植田さんは、白のTシャツにややダボっとした股下15cmの黒の短パンで姿で、手には小型のファルコンスポーツ製GPSウォッチを持ち・・
植田「トラックではGPSが正確だから助かりますね。さすが我が社のGPS ウォッチは夜でも誤差が少ない・・」と言いながら・・・
植田「よし、距離と心拍数の関係をリアルタイムで取得できそうだ」と理系らしい眼差しで一同を見ながら走る
こうして5人は軽く2周(800m)ほどジョグを開始した。ナイター照明の下、薄暗いスタンドからはわずかに夜風が吹き、スポットライトの下を彼らのシルエットが滑らかに周回していく。
メインメニュー:400mインターバル+ビルドアップ
1. 400mインターバル(レスト200m)
ウォーミングアップ終了後、唯コーチがホワイトボード(持参してきた小さめのやつ)をトラック脇に立て、マーカーで書き始める。
中野「さすが本格的だな・・」
海「トップスイマーだと思えないランニング指導だ。」
ホワイトボードにはこう書いている
「400m + 200m rest × 4本」
唯コーチ「まず目安ペース:1kmあたり4:00〜5:00でだいたい時速12〜15kmで最大心拍数の85〜90%で走ります。」
唯コーチ「たとえば400mを2分で走るなら、1km5:00ペースぐらい。レストは200mをジョグ(ゆっくり走る)または歩きで繋ぎ、だいたい1分〜1分半ほどで心拍数を落ち着かせる。乳酸が溜まりすぎないギリギリを狙うのがポイントですよ」とスイミングクラブの時と同じ笑顔で言っている。
糸川「結構〜速いですね〜できるかな・・」
海「糸川さんなら大丈夫だよ。なんでもいつも何でもやっているし」
植田「トラックですから、私のように遅れてもみんな追いついてきますよ。はい!」
中野「よしきた! 400mは空手のステップワークの延長だぜ!」といきなり飛ばす気満々。
海「中野〜僕たちは空手家じゃないことを忘れるなよ。」
中野「忘れるとこだったぜ!」
一同「おいおい・・」
僕「じゃあ、心拍数180超えないように気をつけるよ…」と、少し苦笑いする。
糸川は「最初は1周2分15秒目標で・・いきます。」と、控えめながらも内なる闘志を秘めている。
植田「私は電子計測器で心拍トレンドをリアルタイムに確認してみます。レスト200m区間でどの程度回復するか興味深いですね。はい」
さあ、いよいよインターバル開始。
一斉にスタートラインに立ち、「レディーゴー!」の掛け声とともに、夜のトラックを全速力で駆け抜ける。
中野が先頭をぶっちぎるように見えるが、ほどなくして「うおっ!」と息を上げてペースダウン。さすがヤケクソ!
海は、堅実にピッチを刻み、唯コーチが横を並走。なんと唯コーチ、まるで水泳のように安定したフォームで走っている。
レスト200mは流す程度のジョグを入れる。
糸川「呼吸整えるのが意外と難しいな」と糸川さんが言えば・・
植田「そうですね。心拍が150台まで戻れば次の400mで余力が残せると思います。はい」とアドバイスしつつ、自分もフーフー息を切らしている。
4本終えた頃には、海は汗でTシャツが重く感じるほどになった。
海「でも達成感あるな…」
糸川「ほんとだね」と糸川さんと顔を見合わせ、満足そうにうなずきあう。
次は、をする。
唯コーチ「はーい!と右手を挙げてスイミングクラブのコーチと同じようにしている。
唯コーチ「次はですね。各自の疲労度に応じてビルドアップ走をします。」
唯コーチ「1周400mごとにペースを少しずつ上げていく感じ。最初は4分00秒ペースから始めて、最後は3分50秒くらい、もしくはそれ以上で走ってもいいわ。」
海は独り言のように呟く。
海「最初の1周は4分00秒ペース、次の1周で3分55秒、その次は…」
中野は、いつもの調子で豪快に「ふん!最初から3分50秒まで落とす気はないぜ!」と、空手魂を爆発させそうになるが、1本目のインターバルで相当キツさを味わっているので、ちょっとビビっている様子だ。
糸川は、「私は最初4分20秒くらいで入り、最後は4分00秒まで上げられたらいいな」と、しっかりとした目標をセットする。
植田は、GPSウォッチを確認しながら冷静に「僕も心拍が170台にならない程度で、段階的にペースを上げていきます」とつぶやく。
こうして、メンバーは夜のトラックで、それぞれのペースを守りながら、科学的根拠に基づいたビルドアップ走に挑むのだった。
夜の競技場を、ビルドアップのリズムを刻みながら走る5人。
遠くから見ると、周回ごとに微妙に速度を上げていく姿が何ともストイックだ。ナイター照明に照らされたトラック上で、スピードと心拍数が追いかけっこをしているようにも見える。
終わるとみんなバラバラ・・・軽快に走っているのはやはり唯コーチ。水泳の心肺機能はダテじゃない!次は中野が根性を見せていた。次は僕、海で中野と同じ感じ。糸川さんもゆっくりながら綺麗に走れている。最後は植田さんだ。
唯コーチ「はーい!クールダウンします」と夜風を感じながら、みんなに言う。
メインメニューを終えた後は、全員が1周ないし2周をゆっくりジョギングする。
唯コーチ「はいはーい!さすがに心拍数180まで上げると体が熱くなりますよね。だから夜でもしっかりクールダウンをして、汗を冷やさずにね。静的ストレッチも忘れないようにしてくださいね〜」
科学的ににもクールダウンと筋肉の伸展が疲労軽減に有効といった科学的裏付けをさらりと語るのが、唯コーチらしいところだ。
トラックの内側に移動して、ふくらはぎや太腿、股関節をゆっくり伸ばす、お疲れのチームTRY REXのメンバー達。
中野は「うおお〜〜〜〜〜!ふくらはぎがパンパンだ!でも気持ちいいっす!」と大げさなリアクションを取る。
糸川「この静的ストレッチで明日の筋肉痛もマシになるはずですよね〜」とほんわかした雰囲気で言う。
植田さんは、計測器のログを眺め。
植田「インターバルの3本目と4本目の間で心拍が15拍しか落ちてない・・もうちょい休みを長くするか、強度を落とすか検討の余地がありますね〜はい」と、次回への課題を調べている。
海「今日のラン練習、かなり効いたなぁ・・汗が止まラン!
中野「でた!洒落か〜」
海「だけど、タイムが明確に分かるのはやる気が出る」と満だった・・
全員がクールダウンとストレッチを終え、ようやくトラックを後にしようというとき、中野がひときわ大きな声で宣言する。
中野「おいおい! まだ俺は、やれるぞ? みんなもう帰るのか〜? 夜の闇を斬る俺様は、ここからが本番よ!」
しかし、その言葉に対して唯コーチが笑みを浮かべて・・
唯コーチ「はーい!今日は、ここまで〜」と言い「 あんまり無茶すると明日以降の練習に響きますよ。」「せっかくメニューを組んでるから、根性論だけで突っ走っちゃもったいなですよ」と、ビシッと却下。
中野は「おっオスッ!・・了解っす…」と珍しく大人しくなってしまった。さすが元空手道日本優勝者!中野も伝説的存在なのだ。
糸川と海は顔を見合わせて大笑い。植田も苦笑いしつつ「まあ今夜は充分走りましたよ。実に有意義なデータも取れました。はい」と頷く。
夜風が少し冷たいが、彼らの額には滲んだ汗がキラリと光る。今日の練習はハードだったが、ただの根性論ではなく、数字と科学に裏付けられたメニューが、彼らの士気を一層高めているようだった。
最後に唯コーチがホワイトボードを片手に、軽く両手を広げて締めます。
唯コーチ「じゃあ今日は解散! 明日に疲れを残さないよう、ご飯食べたら早めに寝ること。あとはストレッチと水分補給、忘れずにね!」
そうして彼ら「夜の恐竜たち」は、それぞれの帰り支度を始める。今日行ったインターバルとビルドアップの成果は、きっと次に繋がるはずだ。何よりも、この夜の競技場で得た達成感と連帯感が、一番の大きな収穫だったのかもしれない。
静まり返った競技場のトラックに、再び暗闇と静づけさが戻った。
だが、そこには確かな熱気とともに、かすかな足音の余韻が残されていた・・・
つづく